霊長目直鼻亜目のヒト、ゴリラ、ニホンザルは眼窩が骨で囲まれている(図1)。しかし、曲鼻亜目のスローロリスは眼球の回りの眼窩輪は形成されるが、眼球は骨で囲まれてはいない(図2)。つまり、眼窩と側頭窩は骨によって分けられていない。スローロリスもニホンザルもゴリラもヒトも視覚の動物である。視覚によって食物を見つける。サルたちの眼窩輪形成は眼球を守るためである。
図1.頭骨正面から左:ヒト 中:ヒガシゴリラ 右:ニホンザル
図2.頭骨正面からスローロリス
しかし、スローロリスのように眼窩輪が形成されている動物にシカやカモシカの仲間がいる(図3)。しかし、シカやカモシカの眼球は骨に覆われるわけではない(図4)。シカやカモシカはどうしてスローロリスのように眼窩輪が形成されているのだろうか?シカやカモシカの仲間は目が悪い。カモシカやシカに山の中でばったり会っても、こちらを何だろうっとじっと伺うだけで逃げない。しかし、100mも離れている前の斜面からぼくが歩いている音に気が付いて警戒音を上げて逃げる。警戒音を出さなければシカがいたなんて気が付かなかったのにと思う。聴覚は良いが視覚はダメだ。図3.眼窩輪が形成されているカモシカの頭骨
図4.側頭窩と眼窩は骨で分けられてはいない
左:シカ 右:カモシカ
視覚の動物ではないのにどうして眼窩輪が形成されているのだろうか?遠方にいる外敵を見つけるには視力が弱すぎる。眼球が頭骨の横にあるため前後左右の幅広い範囲を見渡すことができる。しかし、5,6メートル前にぼくがいるのに何だろうとこちらを伺う時間が長すぎる。つまり、両眼が正面を向いていないため焦点を合わせづらいのだ。霊長類やシカやカモシカの眼窩輪は、前頭骨からの後眼窩突起(前頭骨頬骨突起)と頬骨からの頬骨前頭骨突起が癒合して眼窩輪が形成される。猪豚亜目を除く偶蹄類の眼窩輪形成は、♂は角をぶつけ合うので角を支えるために後眼窩突起と頬骨前頭突起が癒合しているのかな?っと考えてしまう。
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しかし、獨協医科大学の哺乳類頭蓋の画像データーベースに因るとウマの仲間は角が出ないのに眼窩輪が形成される。ウマの眼窩輪は後眼窩突起と側頭骨が癒合する。サルや反芻類などとは違う。これはウマの仲間だけかもしれない。
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