京都で先月継父による子殺しが行われた。ぼくは、またも起こったかとガッカリしている。それは各地の福祉事務所も学校も親による子供の虐待・殺しを、両親の経済力、住宅事情、思想信条、性格などにあるとし、殺された子供と両親との関係をほとんど吟味していないからだ。ぼくは慶応やTCA専門学校で教えている時、自分の子が中学生未満の内は再婚どころか恋愛も御法度だと云ってきた。以下、それはどうしてかアップしていく。この問題を取り上げるのは、24日付の朝日で、問題の核心からずれた部分で記事にしているからである。友人TGからも朝日がウソの記事を書いている朝日デジタル京都の継父による子殺し - Google 検索と知らせてくれたからだ。
拙書「ヒトの子どもが寝小便するわけ」(築地書館)p19~26なぜオスザルはコドモを皆殺しにするのか?にも子殺しの背景を書いているので是非読んでもらいたい。
1967年インドでハヌマンラングール(ニホンザルはメスとコドモの中に複数のオス:複雄群だが、ラングールの仲間はオスは1頭:単雄群)を観察していた杉山幸丸は群れのオスが群れ外のオスたちに襲われて群れを追い出され、新たなオスが群れに加わった。すると、新オスはメスが持っている乳飲み子を全て殺してしまったのだ。すると、子を殺されたメスたちが発情し子を殺した新オスと交尾した。異様、異常な行動だと感じた杉山は、別の群れのオスを実験的に取り除いた。すぐに、新しいオスが群れに加わり、乳飲み子を殺し、同じようにメスたちが発情し新オスと交尾したのだ。当時はこのハヌマンラングール行動は異常行動だと考えられた「子殺しの行動学」(北斗出版)。しかし、インド各地のハヌマンラングールでも同じ子殺し・発情・交尾が観察された。それでも異常な行動だと世界の研究者は思っていた。
図1.デリー近郊のハヌマンラングールの群れ
当時は、同種の仲間を死に至るまでまで攻撃するのはヒトだけであり、同種同士の争いでは劣位個体が腹を見せたり、泣きっ面をしたり、逃げたりなどの劣位姿勢・行動を相手に示すと優位個体はそれ以上攻撃しないと云うK・ローレンツ(ノーベル生理学賞・医学賞)の考えが一般化していたからだ(*1)。
が、セレンゲティのライオン(複雄群)でもプライド(ライオンの群れ)のオスたちが放浪オスたちによって追い出されると新たに加わったオスがその群れの乳飲み子を殺し、間もなく発情したメスたちと交尾することが、B・バートラム夫妻によって明らかにされた「ライオン、草原に生きる」(早川書房)。
図2.セレンゲティのライオンのプライド
その後、ベルディングジリスなどのアメリカジリスでは群れオスが他のオスたちから攻撃されるとその様子をメスたちは見ていて、群れオスが負けたと知るといち早く自分の乳児を食い殺す。そうする事によっていち早く発情し、新オスと交尾することが観察されている。これは、早く発情して新オスと交尾することで、群れの社会的地位が上がり、餌を多く食べられ健康な子を産み育てられると解釈されている。
もう、2000年代に入ると、多くのサルの群れやイルカの群れでも、新加入オスや群れ外オスによる子殺しが観察され、さらには単独生活のクマなどの動物でも子連れのメスは放浪オスと出会うとオスはコドモを殺す事が観察されている。哺乳類では乳飲み子がいるメスは発情季が来ても発情しない。コドモに乳を吸われるとメスは発情が抑えられるようだ。チンパンジーでは幼児となった4,5歳までコドモが乳を吸うためメスは発情しない。
さらに驚いた事が観察されている。ケニアのアンボセリNPにいるアヌビスヒヒでは、群れの妊娠メスは群れ外オスが接近してきただけで流産することが解った。これは、マウスを含む齧歯類ではブルース効果と名付けられているもので、実験室ではペアーで飼育していたマウスの妊娠したメスからペアーオスを取り除いて他のオスの敷き藁を入れるとメスは流産すると云うものだ。このブルース効果は実験室内だけの事例であり、野外では実際に観察されたことがなかった。
図3.セレンゲティNPのアヌビスヒヒの群れ
(*1):今ではゴンべNPのチンパンジーが群れ同士の争いで、一方の群れオスたちを悉く殺してしまったことが1974年故J.グドールによって観察され、さらにはマハレNPのチンパンジーもM群のオスがK群のオスを殺した事を故西田利貞らが報告している。つまり、ヒト以外の動物種でも同種の他個体を殺すことがあるのだ。