真猿下目の中でアジア・アフリカに生息しているニホンザル、キンシコウ、テナガザル、チンパンジーの切歯i・犬歯c・前臼歯pm・臼歯mの歯の並び方(これを歯式と云う)は、上顎も下顎も2・1・2・3である(図1&2)。真猿下目のサルたちは私たちヒトと同じ歯式を持つ。
図1. ニホンザルMacaca fuscata♂上顎の歯式
図2. ニホンザル下顎の歯式
ここで、哺乳類は魚類や両性・爬虫類とは違って、切歯、犬歯、前臼歯、臼歯と異なった形の歯をしている異歯性の動物である。しかし、魚やカエルやワニは同じ形の歯を持つ同歯性の動物だ(図3,4)。もちろん、例外がある。
哺乳類の基本的歯式は上下とも3・1・4・3である。中心からi1,i2,i3・c・pm1,pm2,pm3,pm4・m1,m2,m3と表す(図6)。イノシシは上下とも哺乳類の基本的歯式を持つ。ニホンザルの切歯は2本で、前臼歯は2本である。切歯はi3が消失し、前臼歯はpm1とpm2が消失してしまったのである。ニホンザルと同じ歯式のヒトは3番目の臼歯(親不知)が消失しそうである。面白い事に切歯が消失する場合は外側のi3から始まり、前臼歯の場合はpm1の前方から消失し、臼歯の場合は奥から無くなる。
尚、切歯とは前顎骨から出る歯であり、前臼歯とは上顎骨から出る歯で生え変わる歯、臼歯とは上顎骨から出る生え変わらない歯である。犬歯とは前顎骨と上顎骨の境目に出る歯である。
さらに哺乳類の歯では、基本的歯式の本数以上に増えることは無い。つまり、切歯は4本や5本にはならないし、前臼歯も5本や6本にはならない。しかし、本数が減る事は普通にあり、ゼロになることもある。アカネズミやクマネズミの上顎の歯式は1・0・0・3だ。切歯はi3、i2が消失し、犬歯や前臼歯も消失している。あるいは、シカやカモシカの上顎の切歯は無い。
最近貰ったパラワンセンザンコウには上下の歯が一本もない。https://tanzawapithecus.blogspot.com/search?q=%E3%83%91%E3%83%A9%E3%83%AF%E3%83%B3%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%B6%E3%83%B3%E3%82%B3%E3%82%A6
図3. ブラジルカイマンPaleosuchus trigonatusの頭骨
TCA 専門学校で
図4.ブラジルカイマンの上下の歯
図6. イノシシ♀の上顎の歯式
図7. イノシシの下顎の歯式
さて、リスザルなどの広鼻猿の上顎の歯式は、2・1・3・3だ。第三臼歯が抜けて無くなっているが、2本の歯根の痕が分かる(図8)。下顎も同じだ(図9)。リスザルなどのオマキザル科やクモザル科のサルは上下とも2・1・3・3であるが、オマキザル科のマーモセット亜科のマーモセットやタマリンは上下とも2・1・3・2という歯式である(図10,11)。図10の最後位の第二臼歯は第一臼歯より小さくなっているので、将来はこの第二臼歯を消失する可能性ががる。
図8.リスザルの上顎の歯式
左右の第三臼歯が脱落している
図9. リスザルの下顎の歯式
右第一前臼歯が消失している
図10. ワタボウシタマリンSaguinus oedipusの上顎の歯式
Animal Diversity Webから
図11. ワタボウシタマリンSaguinus oedipusの下顎の歯式 ADWから
手持ちのリスザルの左右の第三臼歯が欠落したのは歯根が浅かったからであり、広鼻小目のサルたちは、臼歯が3本から2本に移行しつつあるようだ。