同じ偶蹄類なのに、反芻亜目Ruminatiaのシカやカモシカの腓骨は脛骨の上端と下端に残存するだけであった。しかし、猪豚亜目Suinaイノシシはシカやカモシカのような反芻類のような腓骨の状態ではなく、しっかり腓骨として全て存在している。イノシシの後肢は見た目はシカやカモシカのものに似ている。大腿骨、脛骨・腓骨、足根骨、中足骨、指骨となり、シカやカモシカでは中足骨が大腿骨をほぼ同じくらいの長さがあったが、イノシシでは中足骨が短い(図2&3)。蹄がある末節骨だけが地に接し、中節骨、基節骨は中足骨とともに立ち上がる。しかも、イノシシの中足骨は第三中足骨と第四中足骨の二つに完全に分かれている(図2&3)。
図1.ウリボウの脛骨と腓骨
右の脛骨と腓骨は左のもの、左の脛骨と腓骨は右のもの
図2.イノシシの中足骨と基節骨・中節骨・末節骨
末節骨に蹄がつく
左:、右足 右:左足
指行性のイヌやネコのような末節骨・中節骨・基節骨の指骨だけを地面つけ、中足骨を上げて歩く動物の中足骨の長さと身体の大きさからみるとイノシシの中足骨の長さはほぼ変わりはない。つまり、イノシシは蹄行性の動物であり、末節骨だけが地面に接するが、中節骨や基節骨は中足骨と共に地面にはつかないが、イヌやネコのように中足骨から地面につけない歩き方に似ている。極端な云い方をすると、末節骨に蹄がつくかカギ爪がつくかの違いだ。ここで、シカとイノシシの中足骨と基節骨・中節骨・末節骨の長さを比較しよう(図3&4)。
図3.左:イノシシ 右:シカ
Om:中足骨 p:基節骨 m:中節骨 d:末節骨
尚、このシカの中足骨の長さは図4を見て下さい。
図4.シカの中足骨の長さ210mmある
猪突猛進と云う言葉があるが、走る速さでは到底シカには負けてしまう。シカもカモシカもそうだが、中足骨が長くなることによってさらに、中節骨や基節骨も長くなることによってますます着地面から身体が遠ざかり走る速度も増したと云える。さらに、イノシシでは中足骨は第三と第四の二つの骨となっているが、シカやカモシカでは、これらの二つの骨が合体し一つとなっている(図5)。中心線で左右に分かれているのが解かる。左端のシカの中足骨の下方で図3の第三基節骨と第四基節骨が着き、図4の状態となる。つまり、イノシシは2本の中足骨から2本の基節骨、2本の中節骨や2本の末節骨は骨にすると分かれている。しかし、シカやカモシカは2本の中足骨が癒合・合体しているが、2本の基節骨と中節骨、末節骨となる。
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