7月6日の朝日新聞の一面に「後に続けとニホンザル大脱走」と記事の案内があった。
京都大学霊長類研究所で飼われているニホンザルが回りがコンクリートの高い塀で囲んだオープンエンクロジャーとなっている飼育場から、中に植栽されている木の上に登って枝の弾力を利用してフエンスを飛び越えたようだ。
想像以上のジャンプ力に研究者も驚いているという記事が目に飛び込んだ。
この記事を読んで、ぼくは今の研究者に野生のサルを観察しなさいと言いたい。
植えられている木がどの程度になれば、飛び出ることができるか判断がつきそうなものなのにそう判断できる研究者がいないのだ。
先日の下北半島のサルが上野動物園の檻に移されて、逃げたというのは野性のサルの力強さを見せ付けてくれたもので、動物園の飼育関係者にとってはそこまでは想定外であったというのは理解できる。
しかし、今回の霊長類研究所での大脱走は、サルの研究者が飼育している施設なのに、何故、このようなことが起こるのか?と疑問に思った読者の方々もいらしゃったかと思う。
野生ザルを追跡して調査・観察する研究者が少なくなってきたことによるだろう。
また、論文・報告書を読まない研究者が増えているのではないかと危惧する。
新聞記事の中で「脱走ザルの中にボス級のメスザルがおり、このサルが手本になって次々に飛び出した可能性があるという。」
これは、サルの群れの行動を知らない素人の言葉だ!驚く。
サルの行動や生態の研究者がいたとしても海外に生息しているサル研究に熱心で、ニホンザル研究はおろそかにされている。
せめて、海外から日本に戻っている時だけでも野生ニホンザルを観察するという姿勢があれば、このような事件が報道されることはなかったろう。
以前なら、恥かしくてこのような事件があったとしても隠していたかもしれないが、霊長類研究所の存在のある種の宣伝として報道してもらったとしたら、悲しい。
2 件のコメント:
私も読みました。不思議な記事でしたね。
野生動物の研究というのは遺伝子レベルだとか、そんなことばかりやっているのですかね?
もう何年も前からですが、何年もかからなければ得られないようなテーマを持って野外観察・研究する人が非常に少なくなっております。
数ヶ月で結果が出易い観察が重視され、その結果、一般的行動・生態観察は二の次にされ、サルを知らないでサルの分析的行動観察してサルを知ったようになっているんです。
だから、木の弾力を利用して飛び出す。出た4、5歳の子供たちのほかにボス的なオトナメスがいたので、そのボスに学んだとは、ちょっと信じられないくらいのアホさ加減です。
日本の霊長類学が衰退の一途を辿っているといわれておりますが、まさしくそのような思いを持っております。
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