トガリネズミ目Soricomorphaモグラ科Talpidaeのモグラ亜科Talpinaeとヒミズ亜科Scalopinaeの上腕骨の比較では、大きさと形状において大きな違いがあった。
では、同じトガリネズミ目の動物たちではどうかなと思い標本を調べた。
下の写真で判るようにヒミズとオオアシトガリネズミでは形状は良く似ているがヒミズの方がトガリネズミよりも一回り大きい。
しかし、オオアシトガリネズミとジネズミでは形状も長さも異なる。両者は同じトガリネズミ科Soricidaeで、属の違いだけである。ジネズミの上腕骨は他のトガリネズミ目のものよりもハタネズミのものに形状が似ている。
つまり、トガリネズミ科のオオアシトガリネズミの上腕骨はヒミズ型だが、ジネズミは齧歯目型(これはイヌやサルのような他の哺乳類の一般的な形)だ!
オオアシトガリネズミはヒミズのように地面と腐葉層の間を動き回るが、
ジネズミは地表面をハタネズミやアカネズミたちのように動き回っていることが判る。
だから、ジネズミは田舎の家屋内でウロチョロしていることがあるんだ!
Fig.1 後ろから見た上腕骨Humerus 左からヒミズUrotrichus talpoides、オオアシトガリネズミSorex unguiculatus、ジネズミCrocidura dsinezumi、ハタネズミMicrotus montebelli
Fig.2 前から見た上腕骨、左からヒミズ、トガリネズミ、ジネズミ、ハタネズミ
脊椎動物、否、哺乳類各種の骨格の各パーツは非常に良く似ている。相似形だ。
指骨から始まって、前肢の橈骨、尺骨、上腕骨、尺骨、椎骨の各部分、下肢の腓骨、脛骨、大腿骨
は頭骨とは比べ物にならないほどよく似ている。
頭骨は食べ物によって形状が違っていた(拙著「頭骨コレクション」)が手足の骨の違いは大差ないと思っていた。しかし、このところ骨を眺める時間が増えると違いが見えてきたが、
その違いが生活の仕方や歩き方なのか、何によるものか良く判らなかった。
今回、ヒミズやオオアシトガリネズミ、ジネズミの上腕骨を比べて、ヒミズとオオアシトガリネズミは科が異なるのに同じような形状をしていることで、生活空間、生息場所の違いが上腕骨に表れていることを知った。
Fig.2のハタネズミの上腕骨ではヨットの帆のように三角筋粗面が大きく張り出ている。しかし、他の動物では張り出しは小さいなど、見ていくと様々な違いが目に留まり始めている。
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