が、大腿、膝、足がまるで一本の棒のようになって前に出される。膝が上がらない上につま先が上がらないので、少しの段差があるともう、足を前へ出せなくなる。スロープのようなところだとスムーズに前に歩ける。
釧路のような街だと、どうにか老母でも歩くことができる。しかし、ぼくがチンパンジー調査でいたマハレ近郊の村々や、キゴマの街、あるいは、キンシコウの調査で行く西安から150キロ南西の秦嶺山脈の麓の村、これらの地域では老母が散歩することは不可能だろう。
散歩していると家ではイヌにしか声かけないのに、出会う人たちと挨拶を交わすことになる。外出することは刺激を与えて、肉体ばかりでなく精神をも活性化させていることが判る。
老人たちに優しい道路は障害者にも優しい道路である。
だが、一方でそのような道路で育った若者は、膝を上げないで、つま先を上げないで歩き、老人たちと同じように足裏を引きずって歩く。そのため、登山道を若者と一緒に歩くと、彼等は度々木の根や倒木、石などにつまずく。膝やつま先を上げて歩く当たり前の歩きができなくなってしまっている。
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