骨盤は、左右の寛骨とその間の仙椎からなる。寛骨は腸骨と坐骨、恥骨からなるが、アカネズミのような小型哺乳類では生後間もなく一つ骨(寛骨)になっている。図1、2、3は、齧歯目の寛骨である。これらの左右の寛骨は晒骨するとばらばらである。
図1.ハタネズミMicrotus montebelliの左右の寛骨
図2.ラットRuttus norvegicusの左右の寛骨
図3.エゾシマリスTamias sibiricus lineatusの左右の寛骨
図4はウリボウの左右の寛骨を恥骨結合でボンドで貼り付けた。さらにこの寛骨の腸骨も離れていたのをボンドで着けた。
図4.腹側から見たウリボウSus scrofaの左右の寛骨
図5は左右の寛骨が合着している、イヌ(愛犬クロ)とタヌキ。タヌキもクロ(14歳で死ぬ)も老齢個体だ。老齢になると左右の寛骨が合着する動物が多い(図5、6、7)。図5.左右の合着した寛骨 左:タヌキNyctereutes procyonoides 右:イヌCanis familiaris
タヌキの仙骨はボンドで着けている。
図6.ネコFelis catusの合着した左右の寛骨
図7.シカCervus nipponの合着した左右の寛骨
上記のように老齢化したイヌやネコなどの食肉目の動物たちやシカなどの偶蹄類の動物たちは性成熟を過ぎると左右の寛骨が恥骨結合・坐骨結合して一体になる(図5、6、7)。
しかし、仙骨が左右の寛骨と癒合・合体しているのは、ぼくの手持ちの標本の中では秩父産のイノシシ(友人YNから)だけである(図8)。第一仙椎の翼端部分が腸骨と癒合しているのが判る、また恥骨結合や坐骨結合もしっかりしている(図8)。このイノシシは相当な老齢個体だと思われる。哺乳類の接触し合う骨は(例えば、頭骨の各部分の骨)、性成熟を過ぎて老齢化すると癒合・合体する。図8.イノシシSus scrofaの仙骨と寛骨が一体化した骨盤
第一仙堆の仙椎翼の左右の両端が寛骨の腸骨部と癒合
一方、モグラの仲間は生まれながらに(多分)仙骨と寛骨がしっかり結合した骨盤を持っていると思われる。真無盲腸目のモグラ科(モグラ、ヒミズ)の骨盤は仙骨と寛骨が一つになっている(図8、9、10)。ぼくの持っているモグラやヒミズが全て老齢個体だとは思えない。知人が畑で捕獲したアズマモグラ個体も各務原の友人から送ってもらったコウベモグラも全て仙骨と寛骨が癒合・合着した骨盤であるし、東丹沢で拾ったヒミズの全ての個体もそうである。しかし、日本産の真無盲腸目にトガリネズミ科の動物たちが生息するが、ジネズミもトガリネズミも左右の寛骨は仙骨とは離れている(図11)。
図8.ヒミズUrotrichus talpoidesの仙骨、寛骨が合着した骨盤
図9.アズマモグラMogera woguraの仙骨、寛骨が合着した骨盤
図10. ヒミズの骨盤と各骨の名称
図11. 寛骨と仙骨 左:オオアシトガリネズミSorex unguiculatus 右:ジネズミCrocidura dsinezumi
どうして、哺乳類の中では真無盲腸目のモグラ科の動物の仙骨が寛骨と癒合・合体しているのだろうか?地中での穴掘り、トンネル生活の為には、骨盤は一つになる方が機能的・形態学的に適しているのだろうか?
鳥類の骨盤と寛骨も一つになっている(図12、13)。
0 件のコメント:
コメントを投稿