我が国に生息する哺乳類の上腕骨は骨格を作る骨の中で、頭骨以外では最もそれぞれの動物種の特徴を表している。その中でもモグラの仲間の上腕骨は異質とも思えるものだ(2016年6月14日)。頭骨の形態は、その動物の食物の咀嚼や摂取の仕方に大きな影響を与えていることは、拙著「頭骨コレクション」で述べた。
上腕骨は、食物を食べる時に抑えたり、つかんだり、あるいはモグラのように穴を掘ったり、サルのように木に登ったり、さらには同じ木に登るにも前脚の爪で引っ掛けて登ったりするときにこの前肢の上腕骨は大きな役目を果たしている。
しかし、行動・生態上の違いがどのように上腕骨に投影されているかまだまだ説明できない。
この一週間、マウス、ハタネズミ、ラット、ホンドリスなど齧歯目の上腕骨、さらにはノウサギやニホンザル、そしてマングース、ハクビシン、ネコ、タヌキ、シカの上腕骨だけを眺めてきた。
それは、下肢骨の場合は大腿骨でも脛骨でもどんな哺乳類でも左右の区別が簡単にできる。
しかし、上腕骨の場合はすぐに判断できずにいたのだ。
下の写真は左側の上腕骨を後ろから見たものである。
上は肩の部分で肩甲骨が接する上腕骨骨頭で、下は肘の部分で尺骨や橈骨が滑車のように接する。
A:フイリマングースSmall Indian mongooseHerpestes auropunctatus 奄美大島産
B:ハクビシンMasked Palm civetPaguma larvata 東丹沢産
C:ネコDomestic catFelis silvestris catus 各務原市産
D:タヌキRacoon dogNyctereutes procyonoides 東丹沢産
E:ノウサギJapanese hareLepus brachyurus 東丹沢産
F:ニホンザルJapanese macaqueMacaca fuscata 富津市産
下の写真はA:マングース~F:ニホンザルまでの左側の上腕骨を正面から見たものである。
上腕骨の左右の簡単な違いを知りたいために上腕骨を眺めていた。が、A、B、Cの上腕骨の肘の外側に当たる部分に孔があり、この孔(Cの孔に紐を結んでいる)はリスにもある。タヌキやノウサギ、サルには無い。この孔は神経や血管が通るものと思うが、マングース、ハクビシン、ネコ、(ホンドリス)にはあるが、ウサギ、サル、(シカ、カモシカ)には無い。
この孔の和名を知りたい!英名はsupracondylar foramenだ!
下は、正面から見た上腕骨だ!
F:ニホンザルの上腕骨は、子供の骨なので、肩の部分の上腕骨頭や肘の部分の上腕骨滑車部分の軟骨が骨化して癒合する前に外れてしまっている。
次回は左右の骨を並べて見てもらいたい。
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