草食動物、主に草を食べたり木の葉も食べる動物を思い浮かべると、ウシやウマ、ウサギがいる。彼らの仲間の野生動物の歯を見よう。
カモシカとシカの頬歯は前臼歯・臼歯=3・3で、本数も形状も似ている(図1)。
図1.左:カモシカCapricornis crispus 右:シカCervus nipponの頬歯
同じ草食獣であるアナウサギの頬歯は前臼歯・臼歯=3・3であるが、第三臼歯は小さい(図2・左)。頬歯は全て伸び続け、切歯と同じように歯根がない。ポンゴ(スワヒリ名で英名Bushbuck)(図2・右)はカモシカと同じようにウシ科の草食獣であり、マハレ山塊国立公園ではしばしば見た。我が家にもやってきた(図3)。図2.左:アナウサギOrictolagus cuniculus 右:若いポンゴTragelaphus scriptus
図3.マハレ山塊NPのビレンゲの我が家の裏にやってきた
ポンゴとニャニ(キイロヒヒ)1975年
今千葉県で大繁殖しているキョンはシカ科であり、シカやカモシカの頬歯とほぼ同じような形状だ(図4の左)。が、同じ草食でもイワハイラックスの頬歯は前臼歯・臼歯=4・3であり、全ての頬歯が同じ咬合面をしている。AnimalDiversityWebによると果実食もするようだ。
図4.左:キョンMuntiacus reevesi 右:イワハイラックスHeterohyrax brucei
草食動物と云えばゾウもそうである。幸いマハレ山塊NPで拾ったアフリカゾウの歯があるので、アップする(図5)。ゾウは草食というよりも植物食の動物だ。木枝をバリバリ食べてしまうし、掘り起こして根茎やタケノコも食べるし、果実も食べる。これ一本が一つの歯であり、第一前臼歯から順次第二前臼歯と入れ替わっていくようだ。
図6.サバンナシマウマEquus guaggaの頬歯頭蓋の獨協医科大から
最後になるが、ネズミ科ハタネズミ亜科の動物たちの頬歯(全て臼歯)は潰した段ボール紙を横に切った時のような咬合面をもち(図7)、ウサギと同じように歯根がない。
図7.ハタネズミMicrotus montebelliの頬歯
こうやって草食動物たちの頬歯(前臼歯と臼歯)を見てくると、全てに共通しているのは、前臼歯と臼歯の咬合面は同じであり、咬合面の外(頬)側が高くなっている。さらに、頬歯全体の咬合面に縦(前後)に筋が入るカモシカやシカの類と横か斜めに筋が入るウサギやゾウ、ハタネズミの仲間がいる。ハイラックスやウマは咬合面の凹凸が少ない(これらは老齢個体か?)。
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