テン糞②の内容物の骨と歯を写真に撮って(Fig.1)、同定を試みた。
Fig.1のAから齧歯目の上下の切歯であることが判る。
Aの左は下顎の左右の切歯で下側が左で、上側が右であることが判る。
Aの右は上顎の切歯であり、下側は右であり、上側は左側の切歯である。
Bの部分には7個の臼歯があり、この臼歯の大きさと形からネズミ亜科の動物であることが確定する。
Bの部分を拡大したのがFig.2である。
大山山麓には、ネズミ亜科の動物は、アカネズミ、ヒメネズミ、カヤネズミが生息する。
手持ちの標本はアカネズミとヒメネズミとカヤネズミであり、それらと比べた。
C~Jの骨で、ネズミ亜科の動物を同定する技量をぼくは持っていない。
Cは頚椎の骨で、上:環椎、左下:軸椎、右下:第三頚椎(かな?)
Dは右の肩甲骨、Eは右上腕骨、Fは聴胞、G・Hは下顎骨の切歯が入る部分、Iは後頭骨の大孔部分、他は頭蓋骨の部分の破片で、下に肋骨が一本ある。
Fig.1 テン糞②の内容物の骨と歯
Fig.2 Fig.1の臼歯拡大
手持ちの切歯の大きさを比べるとアカ、ヒメ、カヤの順に小さくなる。
Aはヒメとほぼ同じ大きさであり、カヤよりも一回りも大きく、それはD肩甲骨の大きさでも区別できた。
また、大きさ比べでは、環椎や軸椎もヒメに比べるとカヤは非常に小さい。
テン糞②からでてきたのはヒメネズミだったのだ。
では、テン糞③からでてきた内容物(Fig.3)はエゾエノキの種子2個と果皮と果柄がついた種子、さらに骨片と歯や毛が出てきた。
Fig.3 テン糞③の内容物、エゾエノキの果実と骨と歯
Fig.3の骨と歯を拡大したFig.4をみると、Aの左は上顎の左右の切歯で、右は下顎の右切歯である。Bは歯根が2本なので第三臼歯だ。Cは上腕骨の肘部分であり、Dは大腿骨の膝部分(若い個体のため軟骨部分が外れている)
で、大きさを比べると、この骨や歯の持ち主はまだ若いアカネズミであることがわかった。
Fig.4 Fig.3の骨と歯の拡大
テン糞②に含まれていた歯や骨の持ち主はヒメネズミで、
テン糞③に含まれていた骨や歯は若いアカネズミのものであった。
テン糞②があった地点は標高445mの位置であり、テン糞③は380mの地点にあった(Fig.5)。
テン糞②とテン糞③との距離は直線で約1250m離れている。これらのテンは互いに相手の事を知っている中であろうか?テン糞③とテン糞④では450mくらい離れている。
当然③と④の糞をした個体同士は互いに臭いで相手のことを理解しているだろう。
テンのような単独生活者の情報伝達は、臭いだとしても視覚や音声情報に比べるとほんの少ししか情報伝達できないことになる。
ぼくらの考える以上に音声でもかなりの情報を伝え合っているのだろうか?
Fig.5 テン糞①~④があった地点
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