「特定秘密保護法反対」

「特定秘密保護法」、「集団的自衛権」に反対します。憲法第9条をしっかり守りましょう。教育勅語の教材活用は間違いだ!

自由であっても、他人の生まれ、身体、性別、年齢、故郷、風習、宗教、民族、国を差別する、小馬鹿にする、冒涜するのは許されない。

原発不要・核廃絶


2015年5月4日月曜日

カヤネズミの幼獣の脛骨と腓骨は?  How about the tibia and fibula of a infant harvest mouse?

カヤネズミMicromys japonicusはネズミ科Muridaeの中ではもっとも小さな動物であり、日本から欧州にかけての動物地理学上の旧北区に生息している。
ネズミ科の動物の多くはFig.1のアカネズミApodemusu specioususのように腓骨が脛骨の中くらい(↓)で癒合合体して、まるで腓骨が脛骨の途中から枝分かれしているようになる。
Fig.1 アカネズミApodemusu speciousus.の右の脛骨(t)と腓骨(f)

しかし、カヤネズミMicromys minutusの脛骨と腓骨は脛骨の中部分で癒合するものの踝にかけて再び離れる(Fig.2参照)。

Fig.2  カヤネズミMicromys minutus成獣の左右の脛骨と腓骨

カヤネズミの脛骨と腓骨が踝付近で再び分離するのは、カヤネズミがカヤの中をぼくらのように足首を前後・左右に回して足指でもカヤの茎をつかんでいるからだと考えられる。

では、カヤネズミの幼獣の時は脛骨と腓骨はどのようになっているのか?
ネズミ科はネズミ亜科とハタネズミ亜科に分かれるが、ハタネズミ亜科は地中生活に適した特殊化したネズミたちであるようだ(金子之史、1969)。また、金子(前掲)によれば、ネズミ科の動物は小型化が進行しているようだ。
さらに、ネズミ亜科の中ではドブネズミRutus norvegicusがもっとも一般的な形態をしているようで、ネズミ亜科の中ではカヤネズミは小型化がもっとも進行し、さらに、Fig.2のように脛骨と腓骨が踝側と膝関節側で分離している。

カヤネズミの幼獣は骨の形成において原始的傾向にあると考えられる。
それは、ドブネズミなどの他のネズミ科の動物のように脛骨の中ごろから腓骨が枝分かれして膝の方に出ていると考える。

bluetittitさんから郵送されてきた、カヤネズミのミイラ一匹を水に浸けたことをアップした。
柔らかくなったようなので、待ち切れず解剖セットで後足と胴体から切り離した。
できるだけ丁寧に皮を剥ぎ、肉も取り除いたのがFig.3a~Fig.4bである。
完全に肉を除去しきれていないが、脛骨と腓骨の状態を見ることができる。

Fig.3a 左の脛骨と腓骨の境目に脛骨側から↑をした。

Fig.3b Fig3aの脛骨と腓骨を拡大した。

Fig.4a Fio.3aを裏返して撮った。↓は脛骨腓骨の境目だ。

Fig.4b 脛骨と腓骨部分を拡大した。右側の膝の方で腓骨が脛骨から分離している。

成獣と幼獣の脛骨と腓骨の状態は大きな差異が認められないが、幼獣ではFig.4bに見られるように成獣よりも癒合合体しているようだ。踝側では脛骨と腓骨が分離していない。

つまり、幼獣ではネズミ科の動物では特殊化していないアカネズミの脛骨と腓骨の状態に近いと云える。何だか当たり前とも云えるような結論となった。
bluetittitさんの情報ではこの幼獣はセイバンモロコシの球巣の中で4匹で死んでいたようだ。
この幼獣はまだ外のセイバンモロコシの林の中を歩いたことがないのかも知れない。
林に捕まったり跳びはねたりして移動することにより、成長と共にしだいに踝の方の腓骨も脛骨と離れていくのであろう。
齧歯目の進化については詳しく調べてはいないが、ネズミ科よりもリス科の方が生態・行動上の特殊化が進んでいるのは明らかだ。

リス科Sciuridaeの成獣では脛骨と腓骨が完全に分離している(Fig.5)。

Fig.5 リスSciurus lis成獣の左脛骨と腓骨

幼獣は成獣よりも特殊化が進んでいない原始的な状態なので、リスの幼獣はネズミ科のように脛骨と腓骨が踝側で癒合している可能性があると考えるのが妥当だろう。
では、幼獣の時はどのように癒合しているのかあるいは癒合していないのかを知りたいものだ。

いやー、ずーとK.Uさんから送付された吉祥寺の齧歯目の幼獣のことが気になっていて、
頭骨では特殊化が進んでいないので同定が難しかった。そのため、下肢の脛骨と腓骨の成長発達が気になっているんだが、まだ、謎の幼獣は不明のままだ。

4 件のコメント:

bluetittit さんのコメント...

おおお、すごい! あの小ささなのに。

カヤネズミの場合、幼獣期には脛骨と腓骨のくっつき度合が高いが、成長にともなって両者の分離が進むということなのですね。

個人的には驚きの結果です。カヤネズミは胎児期には脛骨と腓骨が分離しているが、幼獣期に次第にくっつき、そのままの状態で成獣になったと想像していました。

カヤネズミ幼獣の四肢の発達その他を調べた学位論文では、「発達が最も早期に始まった運動能力は手足の把握」であり、「8日齢個体のほぼ10分の1が垂直棒を登ることができた」そうです。(石若礼子 1999)。これはホネの発達と関係してるのでしょうね。

何事も実際に確かめないとダメですね。

fukuda, fumio さんのコメント...

bluetittitさんへ
そうです。カヤネズミの幼獣期には脛骨と腓骨の癒合度合が高いが成長に伴って分離すると考えられます。

しかし、胎児期の初期には脛骨と腓骨は分離している可能性があります。
というのは、爬虫類でも脛骨と腓骨が分離しているので、分離しているのが祖先型だと考えられるのです。
でも、胎児の骨を見るのはぼくがやっているような腐らすやりかたかたではダメですね。

このカヤネズミ幼獣の下肢は他の部分と共に再び水に浸けております。

bluetittit さんのコメント...

脛骨と腓骨の関係、おもしろいです。先日、大阪自然史博物館で開催中のスペインの恐竜展を見たのですが、確かに脛骨と腓骨はきれいに分離していました。

恐竜には獣型とか鳥型とかいろいろグループがあったようですが、脛骨と腓骨に注目してみるとひょっとして違う進化の跡などが見えてくるかも…しれませんね!?

fukuda, fumio さんのコメント...

bluetittitさんへ
ぼくが脛骨と腓骨の関係に興味を持ったのはシカの後脚を拾ってからです。大腿骨・脛骨や踵骨や距骨はあるものの腓骨が無かったので、拾い忘れたと思ったのです。
シカやカモシカには腓骨がないが、イノシシにはちゃんと脛骨と腓骨は分離して太い腓骨があるし、ウサギやネズミたちは脛骨か腓骨が枝分かれしたようになる。一方、サルやタヌキ、アナグマ、イヌ、ネコたちにはしっかりした腓骨があります。
形態学ではすでに明らかな事ですが、ぼくにとっては新たな知見でなんだか鬼の首でも捕ったように嬉しかったものです。

しかし、紹介された金子之史さんの論文を読んで刺激を受けました。ハタネズミ亜科は恥骨結合していないことも、ぼくとしては不思議に思っていたことを地中生活の適応として説明してくれたので、納得です。
それに恥骨と坐骨、腸骨が癒合した寛骨や仙骨の形状も面白いです。それ、性別を同定できるなんて凄いです。