前回はイタチ(イタチ科)とハクビシン(ジャコウネコ科)の脛骨と腓骨がしっかりしており、これは木登りをするからだ説明した。しかし、イタチ科のアナグマは完全な地上性であり、糞内容物からも木登りするとは考えられない。それはアナグマの糞は腐葉細片や腐葉土で生活しているミミズや節足動物などの外皮や脚が多数混入し、他の食肉目の動物がクワの実食いをしている時にも糞にクワの種子が混じるのは稀であり、クワの実が林床に落ちた時に漁って食べていると思われることが大半だ。それはキイチゴ類やマメガキやサクランボでも同じような事が云える。つまり、アナグマは熟した果実がなっている木には登らないで林床に落ちた時にそれを食べているに過ぎない。
だから、アナグマの腓骨は細く、脛骨に接していると考えられる。が、実際は違う腓骨は太く、脛骨とは完全に分離している。さらに上腕骨に顆上孔がある。この顆上孔は爪を使って木に登る哺乳類の大半がもつのだ。ネズミには無いが、木登りするリス科は顆上孔をもっている。あるいはクマは木に登るので顆上孔がある。
話は少し逸れたが、アナグマは前足の爪で地面を掘り、トンネルを作り恐らく後ろ足で土をかき出す時に、後ろ足首を前後左右に動かしているのではないだろうか?同じように地中にトンネルを掘るモグラは同じように掘った土を後ろにかき出すが、足首の可動性が劣り、前後にしか動かせないのではないだろうか?
アナグマの上腕骨の顆上孔の存在や腓骨が太いことはアナグマも木登りする動物であると思えるが、実際は木登りはしない。木登りとする時の前足の爪の使い方や後ろ足の使い方が、地中でのトンネル生活を可能にしているのだろう。
図1.串間市の若いアナグマMeles melesの左足の脛骨と腓骨
古生物学者は過去に生存していた動物の生活を語る。何を基準にして語るのか?それは化石として出てきた骨だ。骨の形態から現存の動物と対照比較して語るのだ。しかし、それは非常に難しい事だと解かる。
次回は、前足も後足も器用に使うサルの仲間(霊長類)の脛骨と腓骨を見てみよう。
0 件のコメント:
コメントを投稿