丹沢にはシカとカモシカほぼ同じ場所に生息している。
サル調査をしていて、カモシカは1990年以前には全くみたことがなかった。
それは、生息はしているが数が少なかったからである。
2000年を過ぎた頃から、見かけるようになり、4、5年前からは場所によっては
シカよりもカモシカを見かけることが多くなった。
シカは谷間に響きわたる警戒音を出してくれるので、こちらが気がつかなくてもシカの存在がわかり、双眼鏡で対岸斜面のシカを見つけることができる。
一方、カモシカは仲間と一緒にいないで単独のことが多いので、警戒音をだすことがない。
直接姿を見つけて、カモシカを確認することになる。
両者とも生後間もないアカンボウはブッシュの中に隠れていてぼくらに出会っても逃げることはなくただ硬直したようにじっとしている。
彼らの足跡や糞の形状で簡単に識別できないものか考えあぐんでいる。
草木の食痕もどちらのものなのか難しい。
下は先日の堤川林道での食痕である。クリックすると拡大。
歯形の幅が1センチ以上ある。
1センチ以上の大きな幅の歯をもつ動物は?
カモシカもシカも上顎の切歯は無い。
カモシカでは上顎の犬歯も無い。シカの犬歯はあっても
歯肉から出ているのは5ミリ程度のもので消失する運命の歯である。
だから、両者とも下顎の歯と上顎で抑えて草を噛み採ったり、唇や舌で草を巻き取ったりする。
両者の下顎の犬歯は切歯状となり、切歯と並ぶ。
下は丹沢のシカとカモシカの下顎の比較である。
左は同じ大きさの切歯と犬歯が並ぶ、右は第一切歯が幅1センチ以上もある。
どちらがシカ?カモシカ?
左がカモシカで右がシカだ。
堤川林道の上の食痕はシカの下顎の第一切歯の痕だということがわかる。