ハイラックスの後眼窩突起や頬骨弓を見ていて、キノボリハイラックスとイワハイラックスの上から見た頭骨に明らかな違いがあることが解かった。前頭骨fと後頭骨pがキノボリとイワでは異なっている。それは、前頭骨fと頭頂骨pが縫合する冠状縫合線だ。イワの冠状縫合線がV字状になっているが、キノボリでは直線に近い曲がりだ。また、頭頂間骨(インカ骨)Oがキノボリでは台形状だが、イワでは△状だ。さらに、イワでは左右の頭頂骨pの縫合線が矢状隆起になっている。が、キノボリでは左右の縫合部分が平になって側頭稜のように盛り上がっている(図1)。
キノボリとイワの両ハイラックスの頭頂部の骨のこのような違いは何に起因するものだろう。一つ云える事は、イワハイラックスの矢状隆起は側頭筋の支えとして盛り上がっていることが解かる。硬い食物を食べているようだ。一方、キノボリハイラックスは頭頂部が平だが、後眼窩突起から頭頂骨の側壁が盛り上がっているのも、これも食物を咀嚼する側頭筋が着く支えになっている。このように矢状隆起があるイワハイラックスと前後に長い板状になった頭頂骨の違いが、△状か台形状の後頭骨の違いとなって表れているのだ。
図1.頭骨上面から見たキノボリハイラックスDendrohyrax arboreus(左♀と中?)とイワハイラックスProcavia capensis(右?)
f:前頭骨 p:頭頂骨 o:頭頂間骨
キノボリハイラックスとイワハイラックスの頭骨を下面から比較すると、後鼻孔の左右の幅のサイズが違う。イワハイラックスは狭く、キノボリは広い。同じような違いはカイウサギとノウサギの後鼻孔にも見られ、カイウサギの後鼻孔は狭く、鼻骨の幅も狭いが、イワハイラックスとキノボリハイラックスでは後鼻孔の幅だけの違いだ。この後鼻孔の違いは何に基づいているか、考えつかない。
図2.頭骨底面から見たキノボリハイラックス(左♀?と中)とイワハイラックス(右)
これらのハイラックスの頭骨はタンザニアのマハレNP滞在中にチンパンジーの人付けを手伝ってくれたドイツ人のトム(スアヒリ名)から貰ったものだ。イワハイラックスはセレンゲティのもので性別不明、キノボリハイラックスの2個はタンザニア北東部のルショト産だ。
このイワハイラックスは哺乳類頭蓋画像データーベースの載っているケープハイラックス
DKY_1803I.jpg (3060×2036)とは上面と下面からの図が違う。ケープハイラックスのはキノボリハイラックスに似ている。頭頂骨の矢状隆起や頭頂間骨の形状が異なる。また、ADWに載っているイワハイラックスとも違う(図3)。このイワハイラックス♂は矢状隆起がない。手持ちのイワハイラックスは矢状隆起があるので、♂かと考えていたが、、、、。
これらの違いは興味深いが、もうトム(独名:Falk 見ていて、キノボリハイラックスとイワハイラックスの上から見た頭骨に明らかな違いがあることが解かった。前頭骨fと後頭骨pがキノボリとイワでは異なっている。それは、前頭骨fと頭頂骨pが縫合する冠状縫合線だ。イワの冠状縫合線がV字状になっているが、キノボリでは直線に近い曲がりだ。また、頭頂間骨(インカ骨)Oがキノボリでは台形状だが、イワでは△状だ。さらに、イワでは左右の頭頂骨pの縫合線が矢状隆起になっている。が、キノボリでは左右の縫合部分が平になって側頭稜のように盛り上がっている(図1)。
キノボリとイワの両ハイラックスの頭頂部の骨のこのような違いは何に起因するものだろう。一つ云える事は、イワハイラックスの矢状隆起は側頭筋の支えとして盛り上がっていることが解かる。硬い食物を食べているようだ。一方、キノボリハイラックスは頭頂部が平だが、後眼窩突起から頭頂骨の側壁が盛り上がっているのも、これも食物を咀嚼する側頭筋が着く支えになっている。このように矢状隆起があるイワハイラックスと前後に長い板状になった頭頂骨の違いが、△状か台形状の後頭骨の違いとなって表れているのだ。

図1.頭骨上面から見たキノボリハイラックスDendrohyrax arboreus(左♀と中?)とイワハイラックスProcavia capensis(右?)
f:前頭骨 p:頭頂骨 o:頭頂間骨
キノボリハイラックスとイワハイラックスの頭骨を下面から比較すると、後鼻孔の左右の幅のサイズが違う。イワハイラックスは狭く、キノボリは広い。同じような違いはカイウサギとノウサギの後鼻孔にも見られ、カイウサギの後鼻孔は狭く、鼻骨の幅も狭いが、イワハイラックスとキノボリハイラックスでは後鼻孔の幅だけの違いだ。この後鼻孔の違いは何に基づいているか、考えつかない。

図2.頭骨底面から見たキノボリハイラックス(左♀?と中)とイワハイラックス(右)
これらのハイラックスの頭骨はタンザニアのマハレNP滞在中にチンパンジーの人付けを手伝ってくれたドイツ人のトム(スアヒリ名)から貰ったものだ。イワハイラックスはセレンゲティのもので性別不明、キノボリハイラックスの2個はタンザニア北東部のルショト産だ。
このイワハイラックスは哺乳類頭蓋画像データーベースの載っているケープハイラックスDKY_1803I.jpg (3060×2036)とは上面と下面からの図が違う。ケープハイラックスのはキノボリハイラックスに似ている。頭頂骨の矢状隆起や頭頂間骨の形状が異なる。また、ADWに載っているイワハイラックスとも違う(図3)。このイワハイラックス♂は矢状隆起がない。手持ちのイワハイラックスは矢状隆起があるので、♂かと考えていたが、、、、。

図3.イワハイラックス♂ from ADW: procaviidae.jpg
これらの違いは興味深いが、もうトム(独名:Falk Grossmann)とは連絡が取れないし、、、。取れたとしても、もう30年も前の事だ。すると彼はもう50歳か!