昨年、教え子のK.UさんからEmailで添付されてきた齧歯目の幼獣。
その後、K.Uさんは歯を調べようと上顎の臼歯を取り出した。
今月7日にこの個体がチルド便で送付されてきた。
送られてきた日に剥皮し、少し煮て水に浸けた。
しかし、腐るのが待っているのがモドカシクなったので動物淡泊分解酵素のタシナーゼを入れて醗酵分解を早めた。それさえもモドカシイので取り出して骨にした。
目がまだ開いていない幼獣のため軟骨部分の骨化が進んでいないのでバラバラになった。
A:肩甲骨、B:上腕骨、C:尺骨と橈骨、D:前肢の指骨の部分
E:腸骨と坐骨、F:大腿骨、G:脛骨と腓骨
何故か、、右の大腿骨が折れていた。他は、脊柱
Gの脛骨と腓骨を拡大してしかかり見よう。
↓fの腓骨と↑tの脛骨が癒合しているわけではなく分離していることがわかる。
さらに、ツメを見ると、カギ爪状である。
これら脛骨と腓骨の関係やカギ爪は、幼獣から成獣になっても変わらないと考える。
そうすると、この齧歯目はネズミ科やヌートリアのカプロミス科ではないことがわかる。
つまり、リス科かヤマネ科ということになる。
では、頭蓋骨ではどうだろうか?
頭蓋骨のほとんどがバラバラになった。
A:底面からみた頭蓋部分、B:頸椎、C:環椎、D:側頭骨の聴胞部分、E:右上顎臼歯、F:鼻骨、
G:後頭骨底部、H:側頭骨、I:??、J/K:左右の下顎骨
上顎骨から出ている歯式が幼獣なので不明だ。しかし、底面からみたAで、切歯孔が大きく、最前位の臼歯の前部まで入り込んでいる。
こんなに大きな切歯孔をもつリス科やヤマネ科は日本には生息しない。
まるで、ネズミ亜科の動物のようだ。
では、後眼窩突起の状態をみよう。
左右の頭頂骨(↓部分)やその上部の頭頂間骨や後頭骨は広がっていたのを1枚ずつ木工ボンドで張り合わせた。実際よりも広がっただろう。
前頭骨(↑部分)の赤○で囲った部分からリス科なら後眼窩突起が出ているが、
この前頭骨からは後眼窩突起のカケラも見られない。
但し、幼獣なので後眼窩突起の伸長は、これからなのかも知れない。
但し、まったく後眼窩突起が出ないなら、ヤマネ科の可能性が高い。
この頭骨を正面から見ると、こうだ。
幼獣なので頬骨弓もまだ横に張り出していない。
わりと大きな眼窩下孔(→)がある。
この眼窩下孔はリス科のものと形も大きさもまったく異なり、どちらかと云うとヤマネ科のものと似ている。参照、哺乳類頭蓋の画像データーベース
http://1kai.dokkyomed.ac.jp/mammal/jp/mammal.html
K.Uさんから同定を頼まれた吉祥寺の成蹊大学付近の道路で保護捕獲されたこの齧歯目の幼獣は、ヤマネ科の幼獣であるが、眼窩下孔の形状からまた、切歯孔の大きさから日本産のヤマネではない。
で、ネット検索をしていて、辿り着いたのがアフリカヤマネGraphiurus murinusか
モリヤマネDryomys nitedulaだ。
冷蔵庫の主さんのKARFISH別館
http://karfish.asablo.jp/blog/2011/11/28/6220420
K.Uさんからの齧歯目は幼獣なので今一つ、??のところもあるがアフリカヤマネとしておこう。
冷蔵庫の主さんはアフリカヤマネを飼っていて、子供を産ませているので、
彼女にこの幼獣の写真を見てもらったら、すぐ判ることだろう。
ペットとして飼われていた幼獣が、ネコなどに連れ去られたのだろう。
ネコが噛んだのか落とした弾みか不明だが、その時に片方の大腿骨が折れたのだろう。