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2020年7月28日火曜日

イタチ科3種の頭骨・食性・行動から系統的分化を考える  Considering phylogeny from skull, food habits and behaviour of three Mustelidae species in Japan.


このところ日本に生息するイタチ科3種(イタチ、テン、アナグマ)の頭骨を見ながら、不思議な思いに憑りつかれている。それは、3種類とも肉 (動物)は食べるが、大半は昆虫などの節足動物や果実である。

以下は、3種の糞内容物からの判断と彼らを動きを目撃した感想である。
アナグマは腐肉食はするが、動き回る鳥、両性・爬虫類、哺乳類を捕まえて食べる事はほとんど不可能だろう。落ち葉や腐葉層にいる節足動物や果実などを漁っている。
テンは巣立ち直後の幼鳥や両性・爬虫類は捕食することができるし、齧歯目のネズミ科やヤマネ科の動物やトガリネズミ目の小哺乳類を捕食することができる。が、同じ齧歯目でもリスとなると1度も食べたことが無い内に死ぬ個体もたくさんいるだろう。果実が大好きだ。
イタチは両性爬虫類や鳥やリス科を含む小哺乳類やノウサギまで捕食できる。しかし、大半の食物は節足動物だ。
 
彼らの食物がこのように分化したのは何故なんだろう?
頭骨を上から見てもただ大きさだけが違うだけで違いを見つけることはできない(図1)。強いて言うならばアナグマの後眼窩突起は僅かにその存在が判る程度であり、テンやイタチは後眼窩突起の存在が明確である。
図1. イタチ科3種 頭骨上面から
左:イタチMustela itatsi 中:テンMarten melampus 右:アナグマMeles meles
また、頭骨を底面からみても大きさの違いだけで大した違いがない(図2)。ただ、イタチの聴胞が、他の二種のものとは違って枕状に前後に長い。さらにイタチとテンの裂肉歯がT字状でアナグマのは△状だ。また、アナグマとテンの臼歯が平たい臼状だが、イタチの臼歯は外側半分は裂肉歯に応じて尖っている。
図2.イタチ科3種 頭骨底面から(クリック拡大)
左:イタチ 中:テン 右:アナグマ
下顎骨はイタチやテンの切歯は上向きだが、アナグマのものは前に突き出す。イタチの裂肉歯は細く鋭いが、テンやアナグマの裂肉歯は鋭さに欠けアナグマでは臼状にさえなっている。
図3.  イタチ科 3種下顎骨
左:イタチ 中:テン 右:アナグマ
これら、イタチ、テン、アナグマの3種の頭蓋骨を比べると、イタチがもっとも肉食に適した歯を持っているが、アナグマは肉食というよりも雑食だ。そして、テンはイタチとアナグマの中間の歯を持っている。
日本に生息するイタチ科の動物はこれら3種の他にチョウセンイタチ、オコジョ、イイズナさらに北海道にクロテンやミンクがいる。さらにはカワウソやラッコもいる。一つ考えられることは、イタチ科はイタチのように身体が小さな種から次第に身体が大きなテン、アナグマへと分化したのではないだろうか?身体大きさと雑食化が平行して進化していったのではないのだろうか?

イタチは、身体が小さいために獲物に接近するのは容易である。しかし、テンやアナグマのように身体が大きくなるとその分自分の身体に草や枝が当たる。アナグマの大きさではモグラやネズミ、あるいは地上生の鳥類に見つからずに接近するのは無理である。地中にいるモグラやネズミをあの前肢の強力な爪を持っていても掘って獲物を獲得することは不可能である。前肢の爪は腐葉層を掻きまわして節足動物を探すために発達したのであろう。テンはアナグマのように大きくはないので、木も簡単に登れるので、鳥の巣を狙ったり果実を食べたりするように適応していったのだろう。

獲物の見つけ方は、3種とも節足動物や脊椎動物さらには果実などを見つけるのは音や匂とヒゲによる触感だろう。視覚はネコやマングースのようには良くないだろう。アナグマの視覚や聴覚は良くないのは山を歩いていて経験している。ぼくの靴の匂いを嗅ぐまで気が付かなかったり、ぼくがガスストーブをセットしてお湯を沸かしているのに足元まで近づいてきてそのまま通りすぎたことがある。アナグマは嗅覚とヒゲの触感で獲物を食べていると思われる。イタチもアナグマ同様に視覚や聴覚は良くないだろう。しかし、聴胞が他の2者と異なっているので聴覚はアナグマやテンよりも優れていそうだ。その聴覚を働かせて小鳥を捕まえたり、小哺乳類を捕獲したりしていると思われる。そして、ヒゲの触覚で節足動物を食べているのだろう。テンは聴覚、嗅覚はアナグマより良いものと思われる。何故なら、テン糞はアナグマ糞の数倍も多く見つけられるのに、テンがぼくに近づいてきた事に一度も遭遇していないからだ。また、テンの後眼窩突起がアナグマに比べて発達しているのでテンはアナグマより視覚が良いかもしれない。

食肉目のイタチ科が食肉だけで生活できた時代はほんの短期間であろう。始めは、イタチのように小さい動物であったが、植物の果実を食べるようになって大型化が進んだと思える。しかし、北アメリカには大きなクズリGulo guloがいる。こやつは大型獣も襲って食べるようだ。
今では動物や植物の系統的分化については遺伝学的分野の独占である。しかし、野外での動物たちの行動や食性及び頭骨(他の骨も含めて考えたい)から分化について考察するのも一興である。

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