それぞれの動物の前腕骨の尺骨と橈骨の形状は似ており、特に尺骨の形状については肘突起と深い滑車切痕があるため容易に見分けられる(図1の〇)。図1はシカ、ノウサギ、キツネ、サルの右の尺骨と橈骨の大きさを比較し、それぞれの動物の尺骨と橈骨の接触関係を示している。全ての動物たちの橈骨は尺骨の滑車切痕の近くと遠位端で接触する。しかし、二つの骨は接触しても癒合することはない。しかし、性成熟を過ぎたシカ①の尺骨と橈骨はそれぞれの遠位端で癒合する。それはカモシカも同じだ。図1のノウサギ②の尺骨と橈骨は全ての面で癒合しているように写っているが、これは木工ボンドで付着させている。本来は離れている。また、キツネ③も癒合しているように見えるが、これも木工ボンドで形に合わせて尺骨の滑車切痕と橈骨頭付近とそれぞれの遠位端をボンドで付着させている。サル④は尺骨を橈骨をボンドで着けていない。
図1.右前腕骨の尺骨Ulnaと橈骨Radius
←:肘突起 〇:滑車切痕
①ニホンジカCervus nippon ②ノウサギLupus brachyurus ③キツネVulpes vulpes ④ニホンザルMacaca fuscata
このような尺骨と橈骨の接触は、動物たちの前足の動かし方(手首を左右に回す)に関係している。シカやノウサギは上下には手首を動かせても前足の裏を上には回せない。ぼくらヒトはパソコンに向かって手の平を上にも下にも向けることができる。しかし、シカやノウサギはそんな事は出来ない。つまり、尺骨と橈骨がバラバラだから手の平を下に向けてキーボードを打つことや、手の平を上に向けてお茶碗を受け取ることもできる。それは、シカ、ウサギの仲間ばかりでなくキツネも無理だ。それは余りにも図1からも判断できるように尺骨と橈骨が全体的に接触しているからだ。
つまり、尺骨と橈骨を離したり捩じったりすることはできない。しかし、サルやヒトは違う。恐らく、リスも両手でクルミの実を持って食べる事ができるので、リスの橈骨と尺骨も十分離れているのだろう。
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