無根の切歯を持つ齧歯目ような動物の前顎骨は鼻骨の側壁に接し、前顎骨が大きくなる。では、切歯が無い動物の前顎骨はどういう状態なのだろう。上顎の切歯が無いウシやシカの仲間も、前顎骨が大きくなる。これらの有蹄類は下顎の切歯で植物の草や葉や樹皮を噛み、上顎の前顎骨部分は噛んだ草や葉を押さえるのに使っている。そのためだろう。前顎骨は前に伸びて草や葉を押さえやすくなっている(でも、この連中の上顎にも切歯があった方が草や樹皮を噛み切りやすかっただろう)。
では、切歯ばかりでなく歯が一本も無い昨年10月に大学時代の友人からプレゼントされたパラワンセンザンコウの頭骨を見直した。
図1. パラワンセンザンコウManis culionensis
pm:前顎骨、n:鼻骨、m:上顎骨、f:前頭骨、j:頬骨
図2. パラワンセンザンコウ 下から
図1では前顎骨はシカのように鼻骨に接し癒合している。図2では口吻は長いがその大半が上顎骨が占めている。全ての歯が無いので、下顎骨を引き上げる咬筋が付着する頬骨弓が欠落している。ここがシカとは違っている。しかし、センザンコウの前顎骨は食物としてのアリを舐め採った時に下顎骨とで押さえているということかな?でも、下顎骨は余りも華奢だ(図3)。センザンコウは口を開けて獲物を押さえるなどという行動は全くしないでタダ少し開けた口から舌を伸ばしてアリなどを舐め採ることしかできないようになってしまっている。食物に関してはアリに特化した口の構造であるが、せめて大きなカブトムシのような昆虫を食べることができる構造にはなっていない融通性のない口だ。
図3. パラワンセンザンコウの下顎骨
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