2019年4月29日月曜日

ワラビーの前恥骨  The epipubic bones of wallaby

 3月下旬にピグミーオポッサムの前恥骨をアップした。このピグミーオッポサムの死体は専門学校の同僚のNagamine氏から貰ったものだが、有袋類なのでどのような骨格をしているか興味深々であった。十数年前に、学生からフクロモモンガの死体を貰ったことがあるが、その時は頭骨以外の骨についてはさしたる興味を持ってなかったのが残念だ。
 今回の科博の大哺乳類展2では有袋類の骨格は是非ともしっかり見たいものの一つであった。双前歯(カンガール)目のアカクビワラビーの骨格標本が展示されていた。ピグミーオポッサムはオポッサム目であるがワラビーと同じ有袋類(上目)の動物であるでのどんな前恥骨の形状をしているか知りたかった。
図1.アカクビワラビーMacropus rufogriseusの左側面からの骨格
図2.左斜め前からのアカクビワラビーの骨格
図3.左右のアカクビワラビーの前恥骨(赤い→)
図4.左後方から見たアカクビワラビーの前恥骨(赤い→)
前恥骨が恥骨結合から左右にV字状に分かれている(図3&4)。恥骨との癒合部分は良く見えないが、これだけではピグミーオポッサムの前恥骨(図5&図6)と同じように見える。すると、前恥骨と恥骨は骨同士しっかり癒合合体している訳ではなく、靭帯で結合しているんだ。
図5.ピグミーオッポサムMondelphis domesticaの寛骨と前恥骨 
図6.ピグミーオッポサムの恥骨と前恥骨の癒合状態
 前恥骨は子供の成長と共に袋に掛かる子供の体重を支えるものであることは理解できる。しかし、このような新たな骨ができるのはどのような進化的作用が働いたのか? 同じように元あった身体に新な骨ができて進化した動物たちには、ムササビの手の小指側にある手根骨からでる針状軟骨、モグラの手の親指側にある鎌状骨、パンダの親指と云われる小指側にできた手根骨などの骨の形成は、ラマルクの用不用説を想起させる。

2019年4月27日土曜日

ラッコに顆上孔があった!  Sea otter has supracondylara foramen!

 25日に上野の科博で大哺乳類展2を見てきたことをお伝えしたが、どうしても自分が見たい骨の部分を見ることが出来ず歯痒い思いをした。骨格標本とは別に骨の一つ一つを手に取って見たかった。
 ラッコはイタチ科の動物なのでその上腕骨の遠位端の内側にある顆上孔supracondylara foramenの有無を知りたかった。
 この顆上孔は、爪を用いて木に登ることができる動物の上腕骨にはあることが解かっている。リスやモモンガは持っているが、同じ齧歯目でもラットやアカネズミには無い。霊長目でもキツネザルやロリスなどの曲鼻亜目のサルにはあるがニホンザルやヒトなどの直鼻亜目のサルにはない。しかし、ヒトでも数万人に一人の割合で顆上孔がある。もちろん、ネコを含むネコ科の動物は顆上孔がある。クマの仲間の上腕骨にも顆上孔がある。

 さて、イタチやテンは木に登るので顆上孔がある。また、同じイタチ科のアナグマにもある。しかし、アナグマは木には登らない(登れない?)。イタチ、テン、アナグマはぼくが持っている骨標本で明らかであり、どうして木に登らないアナグマに顆上孔があるのか不思議であった。おそらく、アナグマは爪を用いて土の穴を掘ることと結びついていると考えていた。

 で、今回はイタチ科の木に登らないカワウソやラッコの上腕骨をしっかり見たいと思っていたのだ。アナグマにもあるからカワウソやラッコも顆上孔があるだろうと勝手に想像していた。カワウソの上腕骨は見れなかったが、ラッコの上腕骨の遠位端を写真に撮ることができた。
図1.左側面からのラッコの骨格
右側に回って、上からのぞき込むと上腕骨と尺骨が接する箇所が見えた。図2の赤線で囲った部分。
図2.正面斜め上からのラッコの左側の肩甲骨、上腕骨、尺骨の肘頭を赤線で囲む
  左右の上腕骨の遠位端の内側に孔が見えた時は、嬉しかった。それはイタチ科の動物は木に登らなくても顆上孔を持つことが分かったからだ。登攀動物に顆上孔を持つということではなく、イタチ科の動物は全て持つだろうし、カギ爪を引っ搔けて木登りする動物にはあるが、ニホンザルのように木登りをしても爪を引っ搔けて登る訳ではない動物の上腕骨には顆上孔は無いということだろう。
図3. 図2の赤線で囲った部分の拡大
A:上腕骨 B:尺骨の肘頭 →:顆上孔
そんな訳で、ナマケモノの骨格標本がぶら下っていたので、爪を引っ搔けて木を登るので顆上孔の有無を見たかったが無理だった(図4)。
図4.ノドチャミユビナマケモノの骨格標本

2019年4月26日金曜日

糞中のネズミたちの同定  The identification on Murinae in marten's scats.

4月19日の伊勢沢林道歩きで拾った8個のテン糞の内、5個からネズミ亜科の動物の歯や骨がでてきた。ぼくが歩く丹沢山麓のネズミ亜科Murinaeのネズミたちは、アカネズミ、ヒメネズミ、カヤネズミが生息している。手持ちの確実なネズミ亜科の骨標本は、アカネズミだけであり、カヤネズミを持っているが全て兵庫県の西尾ゆうこ氏から送っていただいた乳児のものであり、ヒメネズミと思われるものももっているが、拾って時に既に頭部が潰れていたのでアカネズミかどうかはっきりしない。
そのため、糞中から出てきた骨や歯については、全て単に大きさだけから判断した。
テン糞6からはアカネズミとカヤネズミの歯を思われるものが出てきたが、見てのとおり臼歯や切歯の大きさが随分違う。全て、一応手持ちのアカネズミの標本に合わせて判断した。
テン糞1から出てきたカヤネズミの骨や切歯
A:大腿骨、B:頸椎、C:上腕骨、D:下顎切歯、E:上顎切歯、F:尺骨、G:大腿骨

テン糞3から出てきたヒメネズミの骨とカナヘビの歯
A:尺骨、B:頸椎、C:尺骨、D:橈骨、E:カナヘビの歯

テン糞4から出てきたネズミの骨と臼歯
A:胸椎、B:大腿骨、C:寛骨、D:肩甲骨、E:尺骨、F:橈骨、G:胸椎、H:肋骨、I:第一臼歯

テン糞6から出てきた小鳥の足5個と2種類のネズミの歯や骨
A:小鳥の足、B:大腿骨遠位、C: 、D:左下顎骨と第一臼歯、E:明けネズミの左右上顎切歯、右下顎切歯、臼歯、E':カヤネズミ上切歯、F:カヤネズミ臼歯と左下顎切歯

テン糞8から出たヒメネズミの歯と骨
A:下顎骨、B:第一臼歯、C:左右の上顎切歯、D:左下顎切歯

以上のように、歯や骨の大きさの違いだけによってカヤネズミ、ヒメネズミ、アカネズミを同定したのだ。テン糞3から出てきた両生類の歯をカナヘビとしたのは糞中に鱗と思われるものがたくさん含まれていたからだ。

科学博物館の大哺乳類展2 みんなの生き残り作戦  Mammal2-Struggle for Life 

昨日、高校同期のT.Gomoto氏と上野の科学博物館に行って、特別企画の「大哺乳類展2 みんなの生き残り作戦」を見てきた。3月21日から6月16日までなのでそろそろ空いているだろうと思っていたが、混んでいて、じっくり見ることができないコーナーもあった。
今回は生き残り作戦というタイトルの下に、1)移動運動 2)食べるための歯と顎 3)オスの繁殖作戦 4)こどもの生き残り作戦 とそれぞれのテーマがあり、展示、解説されていた。
会場風景
剥製展示風景
オスの繁殖作戦で、イッカクのオスのキバ状切歯の展示

展示を見終わった後、ビールで喉を潤した。この大哺乳類展にはもう一、二度行くつもりだ。しかし、大人1600円は少し高いかな?

2019年4月25日木曜日

雨の中の丹沢実習  The Tanzawa outdoor prctice in the rain.

昨日、専門学校の丹沢実習があった。予報では夜になるまでは雨は降らず曇りであったが、歩き始めてまもなくポツポツと落ちてきて、皆に雨具を着てもらった。帰りに土山峠でバスを待っている時は酷いザーザー降りであった。それでも、学生たちは自分たちの実習はたいてい雨にやられると大変元気で、ぼくは気が沈むのを奮い立たせて歩いた。
9:02 登りの杉林に出ていたジュウニヒトエ
 高取山で、11時半に雨の中をお昼を食べ、ぼくはこのまま勇気ある撤退をしようかな?っと考えていたら雨が上がったので、仏果山に向かう。
仏果山の展望台からは風も止み、辺室山も見える時があった。皆、学生たちはこの展望に来て良かったっと思ったことだろう。
13:49 仏果山山頂で
 恒例の集合写真を撮った後、山頂の岩場を見たら、センボンヤリがたくさん岩にへばり付いて花を咲かせようとしている。
白いセンボンヤリ
ピンクのセンボンヤリ
 山頂から、鎖場のある岩場を降りる。ここでも霧が晴れて砂利採り場や宮ヶ瀬湖方面が良く見え、アルペン的雰囲気を少し味わってもらう。細尾根にホタルカズラの鮮やかな淡いブルーの花があって写真を撮っていたら、後ろから登山者がきたので、先に移動せざるを得ないので、ホタルカズラの写真を撮れなかった学生たちがいた。
14:15 ホタルカズラ
ミツバツツジの花はほとんど落ちかかっていたが、ヤマツヅジの真紅の花が咲きかかっていた。Nakamatsu君が崖を降りて写真を撮ったようだ。
15:41 エビネはまだ蕾だ
もう、16時頃の土山峠のバスに乗れないことが判ったので、傘を差しながらゆっくり歩く事になる。それでも土山峠のバス停では40分近くも雨の中をバスを待っていた。学生たちに御苦労さんと云いたい!

2019年4月22日月曜日

テン糞8個の内5個はネズミを食べたもの Five of eight marten's scats are ones that ate mice.

  4月19日に伊勢沢林道を歩いて途中から焼小屋沢右岸の尾根に入った。テン糞8個は全て音見沢橋までの林道で見つけた(図1)。テン糞8個の内、5個(①、③、④、⑥、⑧)からネズミ亜科のカヤネズミ、ヒメネズミ、アカネズミの切歯や臼歯、骨を思われるものがあった(下記、表1)。③ではカナヘビとヒメネズミ、⑥では鳥の足とアカネズミとカヤネズミと思われる切歯、臼歯、骨が出てきた。
  テン糞①から⑧までの距離は直線で800mくらいある。その間に見つかったテン糞には3種類のネズミ亜科の動物の歯や骨が見つかった。これらの詳細については別にアップしたい。

  先ずは、19日の歩きで見つけたテン糞8個とタヌキ糞を見てもらう。
図1. 19日のルートと糞位置

7:23 テン糞1
キブシ種子・果肉果皮、昆虫外羽・外骨格・肢、カヤネズミ毛・上切歯・左右下切歯・尺骨・骨片、ムカデ6センチ外皮

7:28 テン糞2
キブシ種子・果肉果皮

7:35 テン糞3
ヒメネズミ毛・尺骨・橈骨・骨片、カナヘビ鱗・歯・骨片

7:40 テン糞4
ヤブツバキ雄蕊葯、カヤネズミ?毛・肩甲骨・左右尺骨・橈骨・骨片・第一臼歯

7:42 テン糞5
キブシ種子・果肉果皮、昆虫脚

 7:44 テン糞6
キブシ種子、アカネズミ毛・左右上顎切歯・下顎切歯、臼歯2、カヤネズミ左右上顎切歯・下顎切歯、臼歯10、羽毛・軸・足爪5個・骨片、直翅目産卵管

7:55 テン糞7
ヤブツバキの雄蕊・葯・花糸、昆虫脚

7:57 テン糞8
キブシ種子・果肉果皮、ヒメネズミ?毛・下顎骨・切歯・臼歯
9:25 タヌキ糞
キブシ種子・果肉果柄、サルナシ種子、腐葉砕片、節足動物脚・外皮

表1 糞内容物 
詳細は上記の個々の糞の項に記載

キブシの果実食いは今月で最後になるかもしれない。これからは、ミズキなどの花食いの季節になり、6月にはヤマグワやキイチゴなどの実食いになるだろう。動物食では、ムカデやカマドウマが増えるだろう。

2019年4月21日日曜日

鳥たちの甲高い囀りの声!   The squeak/shrill whiltle, chirrup, and warble of small birds !

  19日朝の伊勢沢林道は、小鳥たちの囀りがうるさいと思えるほどだった。あまりにも特徴的な鳴き方「チュピー、チュピー、ジィー」をノートに書いた。この鳴き声の主は誰なのだろう?数種類の小鳥たちが甲高く鳴いていた。
  朝の小鳥たちの声で、ぼくはマハレ山塊国立公園の山でトラッカーたちと草葺きの小屋で目覚めたことを思い出した。当時は、鳥や虫の声が普通に聞こえていたので早朝の小鳥の声で目が覚めたのだ。今は、補聴器が無ければ小鳥たちの声は聞こえない。補聴器はカメラや双眼鏡とともに山へ行く時の必需品の一つだ。
  歩いた伊勢沢林道の沢側の路肩にヒトリシズカが何故か4,5本かたまって一か所から出ていた。
ヒトリシズカが咲く時季がやってきたのだ。
7:31 ヒトリシズカ

  このセセリチョウもちょこまか飛び回っていた。セセリやタテハチョウはとまった時に羽根を広げてくれるから絵合わせで同定できるのでありがたい。
8:07 ミヤマセセリのオス
  帰路、直射日光が当たり暑いくらいの伊勢沢林道を下っていると、モンシキチョウだ!っと思った。帰宅して下の写真を見ると後の翅に白い紋が見当たらない。キチョウだ!
11:11 キチョウだ!
  今日は、午後1時半から東大弥生講堂でヤクシマザル調査30周年の記念シンポジュウムがある。久しぶりにサルの話しを聴きに行こう。

2019年4月20日土曜日

尾根を登る Climbed the ridge!

  昨日は、焼小屋沢橋に着いて、コンビニに買ったアメリカンドックを食べ、お茶とスポーツ飲料を飲む。17分を費やす。
8:34 焼小屋沢橋を出る
  途中で綺麗なミツバツツジの花を撮りまくる。Maruさんと伊勢沢を歩いた時に覚えていた尾根への登り口にやってくる。ここで、ザックを下ろし、セーターを脱ぎ、スパッツを着ける。もう、林道から「どうぞ」とう感じのアプローチである。しかし、入り口からすぐ大変になる。アセビの根を掴み、立木を掴み、登っていく。
8:43 林道から尾根への入り口
  3,40センチの細尾根があったり、倒木の下を潜ったり、乗り越えたり、巻いたり、アセビやマツから出る枝を避けるように強引に突っ切たりする箇所が何度もある。この頃、細尾根が怖くなっている。足がすくむ感じがするのだ。だから、凄く慎重に足場を探すことになる。
9:25 早速あったタヌキ糞
  カモシカ糞は新旧取り混ぜてたくさんあったが、カモシカには今回も会えなかった。
9:34 カモシカ糞
  細尾根の岩場?ガレ場を下っていくとリスがモミの実とクルミを食べた痕があった。リスは何故か、少し開けた場所に食物を持ってきてそこで食べる。猛禽や狙われやすいのに、、、ちょっと不思議!
9:54 リスの食卓
  少し、下って鞍部に出るとなんとガードレールが見える。ぼくはすぐ日和見になり、林道に降りることにする。ここから左の方向へ向かって降りるんだった。
9:54 林道のガードレールが見える
  上の場所から右方向に下りていったために、林道のコンクリートの法面の上にでる。飛び降りても怪我はしないが、今のぼくはとても1メートル以上高い所から飛び降りる事なできない。
  このコンクリートの切れ目に出るのに10メートルくらい四苦八苦する。
10:06 林道に降りた
10:10 ほっとする
10:13 何と10mほど下に道が、、、
写真の中央に「水源の森林 津久井郡森林組合」と書いた赤い帽子の白い杭が見える。次回はここからこの尾根に登ることにしよう。

  下は今回歩いた、つGPS上の軌跡である。①は8:43の尾根への入り口で②は9:54の林道が見えた場所である。①~②間の300メートルほどの距離を約1時間10分も掛かって歩いたことになる。
図1 ルート図

2019年4月19日金曜日

ミツバツツジが綺麗! The flowers of Mitsubatusuji, Azalea’s companion, are beautiful!

今日は、ミツバツツジRhododendron diatatumを見に伊勢沢林道を歩き、焼小屋沢橋を過ぎて焼小屋沢右岸の尾根に取り付いた。
ミツバツツジを満喫して13時前に帰宅した。
8:39 焼小屋沢を過ぎて伊勢沢林道山側斜面にミツバツツジ! 
花に近寄る
花をアップ!朝日が当たり綺麗だ! 
8:41 大きなミツバツツジの木だ!もう、これで良いかな?
っという気持ちになる。
しかし、今日は、焼小屋沢右岸の尾根も登りたい。
8:42 先日の帰路に見かけた林道からすぐの尾根への入り口の前で、スパッツをつけ、ストックを伸ばし、尾根に入る。 
9:15 尾根上で見るミツバツツジは清々しい。 
9:32 ミツバが綺麗
もう、至る各所にミツバツツジが咲いている。登って良かった。
座って、アップする。
      
9:41 別のミツバをさらにアップだ!
さらに、尾根を歩いていると左下に林道の白いガードレールが見えるところにきた。ここで林道に降りるのに四苦八苦した。