25日に上野の科博で大哺乳類展2を見てきたことをお伝えしたが、どうしても自分が見たい骨の部分を見ることが出来ず歯痒い思いをした。骨格標本とは別に骨の一つ一つを手に取って見たかった。
ラッコはイタチ科の動物なのでその上腕骨の遠位端の内側にある顆上孔supracondylara foramenの有無を知りたかった。
この顆上孔は、爪を用いて木に登ることができる動物の上腕骨にはあることが解かっている。リスやモモンガは持っているが、同じ齧歯目でもラットやアカネズミには無い。霊長目でもキツネザルやロリスなどの曲鼻亜目のサルにはあるがニホンザルやヒトなどの直鼻亜目のサルにはない。しかし、ヒトでも数万人に一人の割合で顆上孔がある。もちろん、ネコを含むネコ科の動物は顆上孔がある。クマの仲間の上腕骨にも顆上孔がある。
さて、イタチやテンは木に登るので顆上孔がある。また、同じイタチ科のアナグマにもある。しかし、アナグマは木には登らない(登れない?)。イタチ、テン、アナグマはぼくが持っている骨標本で明らかであり、どうして木に登らないアナグマに顆上孔があるのか不思議であった。おそらく、アナグマは爪を用いて土の穴を掘ることと結びついていると考えていた。
で、今回はイタチ科の木に登らないカワウソやラッコの上腕骨をしっかり見たいと思っていたのだ。アナグマにもあるからカワウソやラッコも顆上孔があるだろうと勝手に想像していた。カワウソの上腕骨は見れなかったが、ラッコの上腕骨の遠位端を写真に撮ることができた。
図1.左側面からのラッコの骨格
右側に回って、上からのぞき込むと上腕骨と尺骨が接する箇所が見えた。図2の赤線で囲った部分。
図2.正面斜め上からのラッコの左側の肩甲骨、上腕骨、尺骨の肘頭を赤線で囲む
左右の上腕骨の遠位端の内側に孔が見えた時は、嬉しかった。それはイタチ科の動物は木に登らなくても顆上孔を持つことが分かったからだ。登攀動物に顆上孔を持つということではなく、イタチ科の動物は全て持つだろうし、カギ爪を引っ搔けて木登りする動物にはあるが、ニホンザルのように木登りをしても爪を引っ搔けて登る訳ではない動物の上腕骨には顆上孔は無いということだろう。
図3. 図2の赤線で囲った部分の拡大
A:上腕骨 B:尺骨の肘頭 →:顆上孔
そんな訳で、ナマケモノの骨格標本がぶら下っていたので、爪を引っ搔けて木を登るので顆上孔の有無を見たかったが無理だった(図4)。
図4.ノドチャミユビナマケモノの骨格標本
0 件のコメント:
コメントを投稿