前回ニホンザル♂とハヌマンラングール♀から、ニホンザル♂の口蓋骨水平板末端が最後位臼歯よりも後方にあるが、ハヌマンラングールでは最後位臼歯の中頃に位置することをアップした。が、その後、ニホンザルと同じMacaca属の2種タイワンザル、カニクイザルを見たが、やはりニホンザルと殆ど同じだ(図2&3)。♀よりも♂の方が口蓋骨水平板末端が最後位臼歯より後ろに伸びている。Macaca属に近いPapio属のキイロヒヒ♀の水平板末端もMacaca属の♀のように最後位臼歯の後端と並んでいる(図4)。
図1.ニホンザルMacaca fuscata♂(左)と♀(右)
図2.タイワンザルM.cyclopis♂(左)♀(右)
タイワンザル♂の写真は和田千鶴子氏から
図3.カニクイザルM.fascicularis♂(左)と♀(右)
図4.アカコロブスColobus badius♂(左)と♀(右)
しかし、同じオナガザル亜科のサバンナモンキーは♂なのに、MacacaやPapioの♀と同じだ(図5)。さらにコロブス亜科のアカコロブスでは両性とも口蓋骨水平板末端と最後位臼歯後端が並んでいる(図4)。
口蓋骨水平板末端が最後位臼歯より後方にあるのはサルではMacacaの♂特徴で性差かも知れない。
図5.キイロヒヒPapio cynocephalus♀
図6.サバンナモンキーChlorocebus aethiops♂
広鼻小目(中南米に生息し、アジア・アフリカの狭鼻小目とは、真猿下目の別系統になる)のオマキザル科のリスザルを見ると、口蓋骨水平板末端は最後位臼歯の中頃にある(図7)。この広鼻小目の仲間の頭骨をネットのAnimalDiversityWebで見ると一筋縄ではいかない。それで、手持ちのリスザルと更に曲鼻亜目(霊長目は曲鼻亜目と直鼻亜目に分かれる)のスローロリス(図7)をアップしておく。
図7.リスザルSaimiri sciureus
図8.スンダスローロリスNycticebus coucang♂
山を歩けなくなったら、これまでに集めた骨を見ながら過ごそうと思っていたが、山を歩けなくなるのが10年早すぎた。やはり、野山を歩いて、木々の中を通る風の音や沢のせせらぎや鳥の声を聴き、森の匂いを嗅ぎ、草木の芽生えを目にしたい。