2025年11月12日水曜日

クマは北海道生息のヒグマと本州のツキノワグマ                          Brown bear in Hokkaido and Black bear in Honshu

東日本や北海道の各地でツキノワグマやヒグマが市街地に出没して人を襲っている。幸い、神奈川県ではクマは目撃されているものの、人がクマに襲われていない。ぼくは東丹沢の山塊を歩いていてクマに出逢い写真を撮ったのは2度ある。他2度は木曽古道付近の山麓である。
ニュースではヒグマもツキノワグマも殆ど同列にクマと云うことで扱っているが、ヒグマとツキノワグマを比べるとその大きさ、力強さには天と地の差がある。
図1.標茶町の博物館のヒグマUrusu arctos♂の頭骨
図2.釧路動物園のヒグマ 2025年
図1のヒグマと図3のツキノワグマの側面からの頭骨を比較する。ヒグマとツキノワグマの矢状隆起を比べるとヒグマの隆起の盛り上がりの凄さが判る。ヒグマの側頭筋の厚さを物語っている。次に図2と図3の歩いている姿を見比べるとヒグマの前足の肩に当たる部分が凄く盛り上がっているが、ツキノワグマにはそのような盛り上がりが見られない。
図3.手持ちの長野県のツギノワグマUrusus thibetanusの頭骨
図4.ズーラシアのツキノワグマ 2006年
頭骨の矢状隆起の盛り上がり具合や肩の部分の盛り上がりを比較しても、ツキノワグマよりもヒグマの方が噛む力が強く、また前足の力も強いことがうかがわれる。
阿部永「日本産哺乳類頭骨図説」北大出版2007年によるとヒグマの頭骨最大長は270~366mmだが、ツキノワグマは235~290mmであり、体重はヒグマ:150~300kg、ツキノワグマ:55~187.5kgと載っている。
これらから判断すると、ヒグマとツキノワグマは同じクマ属Ursusであるが、見た目も大きさも格段の違いがある。
TVや新聞ではクマとして記事にしているが、ヒグマとツキノワグマは違う動物と考えなければならない。

子供の頃、牧場の牛が腹を裂かれている死体を見たり、馬の尻の肉が剥がれ落ちてハエが集っているのを見たことや、ヤマブドウ狩りに行った人がクマに襲われて帰って来なかったりした事を聞いたり、檻の中に入っているヒグマの大きさや凶暴な力強さ見ていた。そのためか大人になっても家がヒグマに襲われて壁板が壊され、その部分をテーブルで押さえると云ったほぼ同じ怖い夢を何度も見ていた。サル調査を始めるようになって、丹沢でツキノワグマを最初に見た時は太ったセパードのような印象だった。こちらは腰にはナタを持っているし、襲い掛かってきたら登山靴で蹴とばして追い払うことが出来るとさえ思っていた。しかし、日光で檻の箱罠に掴まったツキノワグマを抑えて麻酔薬を打とうと試みた時に、檻の間に細い伐採された杉材を入れて押さえつけようとしたが、そのスギ材を歯でガリガリ噛み砕く有様を見て、必死になっているツキノワグマの力強さを知った。

日本には北海道生息のヒグマが生息し、本州にはツキノワグマが生息している。両種とも人が素手で対等に渡り合えるものではない。出会った時は決して走って逃げるべきではない。イヌが人を追いかけるように、クマも人を追いかける。クマの走る速さには勝てない。クマを見ながらゆっくり下がるのが賢明だ。鼻が効くが目が悪いので、風がクマの方から吹いているなら、静止しているとクマにはこちらがどこにいるのか判らない。が、大声をだしたり動くとクマに気づかれる。
ぼくは、専門学校の野生動物専攻の丹沢実習では、クマに会ったら「動くな、逃げるな、声出すな」と教えていた。

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