2023年8月15日火曜日

大きな上下の犬歯は互いに擦り減る       Large upper and lower canine teeth abrade against each other

 ぼくは歯が悪い。上も下も入れ歯をしている。定期健診に行くと、入れ歯と自分の歯との間の嚙み合わせが悪くなり、自分の歯を削って調整されたりする。自分としは入れ歯の方を削って欲しいといつも思う。

ニホンザルはぼくらヒトと同じ歯式を持つ。サルの歯を見ていて感じる事がある。それはサルは、自らの歯で他の歯を削っていることである。特に♂の上顎の犬歯が下顎骨の第一前臼歯や犬歯を削り、さらに下顎の犬歯が上顎の犬歯を削っていることである。その事を写真で見てもらう。尚、標本は秩父で有害鳥獣で射殺されたオトナ♂である。

図1.ニホンザルMacaca fuscata♂の正面からの頭蓋骨
上下の歯がしっかり噛み合っている
下顎の第二切歯が欠如
図1や図2を見ても判るように、下顎の犬歯が上顎の第二切歯と犬歯との間に収まり、上顎の犬歯は下顎の犬歯と第一前臼歯の間に収まっている。この上下の犬歯の収まる位置はネコやタヌキやイノシシも同じだ!
図2.ニホンザル♂の左側面からの頭蓋骨
上下の歯がしっかり嚙み合っている
正面図や側面図では擦り減った歯が判りづらい。下顎の第一前臼歯(pm1)の前の部分が斜めに擦り減っている(図3,4)。それは下顎骨が引き上げられた時に上顎の切歯Cと接触してCがpm1を削ることになる(図4)。
図3.下顎の第一前臼歯前部が擦り減っている
図4.上顎の右犬歯Cがpm1の前部と擦れる
図5.前部が擦り減った下顎骨の第一前臼歯pm1
さらに、下顎の犬歯が上顎の犬歯の前面に縦溝を作っている(図6)。
図6.上顎の犬歯前面の縦溝(←→)
何故、サルでは上と下の歯が接触して、歯を摩耗させるのか?他の哺乳類ではほとんど見られない事である。それは、サルの歯が出ている口吻部が短くなり、奥に引っ込んでいるからだ。
ネコもサルと同じように口吻が短いが、第一前臼歯は消失し第二前臼歯は小さく、さら臼歯は小さな第三臼歯1本だけになっているが、サルでは口吻部が短くなっても前臼歯や臼歯が大きく、2・1・2・3の歯が隙間なく存在するため、大きな犬歯は噛み合う歯との間に隙間がないため、接触する上下の歯同士が擦り減ることになる。
サルように上下の歯が互いに接触して擦り減るのはイノシシ♂の上下の犬歯どうしでも見られる(図7)。
図7.イノシシSus scrofa♂の上下の犬歯が互いに擦り減る
図7を拡大すると、下顎犬歯の後側と上顎犬歯の前側が接触し合い、互いに擦り減っている。互いに鋭く研ぎ合っているとも云える。
図8.図7の犬歯部分を拡大
アジア・アフリカの狭鼻猿の♂は犬歯が大きくなり、歯槽部に収まり切れなくなるため、また、イノシシの♂でも同じように犬歯が大きくなり、口蓋にはみ出るために、犬歯が互いに接触し合うことになる。

狭鼻猿もイノシシも♂だけが犬歯が大きくなる。これらの♂の持っている性による障害とも云える。もちろん、サルもイノシシの♂も♀を獲得するために同姓同士で犬歯を用いた争いをする。

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