標本のタヌキやサルやネズミの寛骨や骨盤(左右の寛骨の間に仙骨が入る)を見ていて、サルの仲間と他の哺乳類では大きく異なる点があることが判った。なお、寛骨は腸骨と恥骨と坐骨が大腿骨が接する部分で癒合・合体しいるが、若齢の時はこの三つの骨が離れている(図1)。
図1.1歳ニホンザルMacaca fuscataの骨盤左斜め下から
赤線は恥骨と坐骨が接している箇所
実は、サルの仙骨を挟んで左右の寛骨を恥骨結合させるのにいつも困っていた。イヌやネコのしっかり左右の寛骨が結合するが、サルではそうでなかったからだ。
図2はスローロリス君の骨盤である。どの部分が腸骨で、坐骨か恥骨か、わかりますね。スローロリスの寛骨は恥骨部分だけがしっかり癒合・合体していることがわかります(図3)。これを恥骨結合と云いぼくらヒトもそうです。
図2.スローロリスNycticebus coucangの骨盤左から
図3.スローロリス♂の骨盤腹側からみた恥骨結合
恥骨結合の後ろの△部分の広がりを恥骨弓
しかし、他の哺乳類は恥骨だけでなく左右の坐骨も癒合・合体している(図4&5)。
図4.左からイヌCanis familiaris、キツネVulpes vulpes、タヌキNyctereutes procyonoidesの腹側から見た寛骨と坐骨弓△
図5.左からシカCervus nippon、カモシカCapricornis crispus、イノシシSus ccrofaの背側から見た寛骨と坐骨弓△
しかし、ノウサギの左右の寛骨は恥骨結合はしっかりしているものの坐骨結合はまだしっかり癒合していない(図6)。この個体はまだ若い個体の可能性が高い。
図6.ノウサギLepus brachyurusの腹側からみた寛骨
いろいろ寛骨を見ていたら、ヒミズでは坐骨ばかりでなく恥骨も結合しない(図7)。が、アズマモグラは恥骨結合が見られる(図8)。図7.ヒミズUrotrichus talpoidesの骨盤 左斜め腹側から
図8.アズマモグラMogera woguraの骨盤 左斜め腹側から
初めはサルの仲間は恥骨結合があるが、恥骨・坐骨結合があるイヌやネコの仲間や偶蹄類とは違うと思って、いろいろ眺めていたら、若いノウサギでは坐骨結合が進んでいなく、さらに真無盲腸類のヒミズでは恥骨結合も無いが、モグラでは恥骨結合が見られるなど。①恥骨結合なし、②恥骨結合あり、③恥骨・坐骨結合ありの3タイプがある事が判った。しかし、これらの違いが㋐系統分類、㋑生態‣生理の違いによるものか?これからの課題である。
恥骨結合だけなのは、マウスもそうだった。座骨結合がマウスでは見られない。しかし、同じ齧歯目のリスでは坐骨結合が少し見られる。20230425 6:24 記
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