2021年2月28日日曜日

テン糞やフクロウのペリットの小哺乳類(トガリネズミ目)の骨片の区別1) The discrimination of small mammals' bones in the marten's scats and /or the owl pellets1)

 テン糞などの動物糞の内容物を調べていて、獣毛が混入していれば哺乳動物を食べたことが判る。更に、歯が見つかればほぼ食べた動物を同定できる。しかし、歯が混入していなくて、上肢や下肢の骨片の端っこが出てくることが多い。

今回は先ず、モグラやヒミズ、ジネズミ、トガリネズミなどの手持ちの骨から、上記の動物たちの1)肩甲骨、2)上腕骨+尺骨・橈骨、3)骨盤(寛骨+仙骨)、4)大腿骨+脛骨・腓骨をアカネズミのそれぞれの骨を対照させて違いを際立たせてみたい。

1):肩甲骨 Scapula

アカネズミの肩甲骨の形状(図1)は日本の陸生の他の哺乳類のものと大きな違いがない。食肉目のイヌやネコ、鯨偶蹄目のシカやカモシカ、ウサギ形目のノウサギやカイウサギ、齧歯目のリスやムササビの肩甲骨もアカネズミの肩甲骨と相似形をしている。この骨の相似は多くの動物たちに共通している事である。だから、ラットならラットの一種類の動物の骨格を覚えたなら、上腕骨、尺骨、大腿骨、脛骨など他の動物たちに応用が利く。

尚、小哺乳類の大きさの対照させたアカネズミはニホンリスなどと比較しても非常に小さく(図2)、テンなどの餌食になりやすいからである。リスなどの骨片が糞内容物に含まれていれば骨の大きさからトガリネズミ目か野山のネズミ科の動物との違いが判る。但し、ヤマネの骨に関してはテン糞内容物として臼歯と一緒にでてきた骨片だけなので、上肢・下肢、骨盤などの大きさは不明である。

図1. アカネズミApodemus speciosusの左右の肩甲骨
長さ13mm、幅7mm
図2. 2つの右側肩甲骨の大きさ比較
左:ニホンリスSciurus lis 右:アカネズミ

さて、トガリネズミ目のモグラ科のアズマモグラやヒミズはアカネズミの肩甲骨の形状を覚えたとしても俄かには応用できない。それは、肩甲骨が細長いからである。
アズマモグラMogera woguraの肩甲骨
長さ23mm、幅5mm
ヒミズUrotrichus talpoidesの肩甲骨
長さ15mm、幅4mm
しかし、同じトガリネズミ目だが、トガリネズミ科のジネズミやトガリネズミ(この標本は友人のTG氏が網走駅から数百メートル離れたとこで転がっていたもの見つけたものだ)は人に踏まれたのであろう。頭骨を含め骨が割れていた。ジネズミの肩甲骨の形状とトガリネズミは似ているであろうと推定する。それは、トガリネズミ科の動物は、モグラ科のモグラのように地中に潜らずに地表面を歩き回っていることから、トガリネズミもジネズミと同形の肩甲骨であると思われる。
ジネズミCrocidura dsinezumiの肩甲骨
長さ7.5mm、幅2.5mm
網走で拾われたトガリネズミSorex caecutiensの肩甲骨
長さ幅不明
地中も潜るモグラ科の動物は細長い肩甲骨をもつが、地表面を移動するトガリネズミ科の動物はアカネズミと変わらない幅広の肩甲骨を持つことである。それは兎も角、アズマモグラ、ヒミズ、ジネズミの肩甲骨の違いは分かったであろう。テンやキツネ糞からあるいは猛禽のペレットからこれらの端の部分が出てきたら大きさと形状で同定できるだろう。
ここでは、丹沢に生息するカワネズミの骨を出してはいない。トガリネズミ科の動物では大きい。ジネズミと同じような骨を持っていると思えるが、カワネズミは渓流の中を潜ってヤマメやイワナなどの渓流魚を捕まえて食べる能力を持っているのでどんな骨格をしているか知りたいものだ。また、ヒメヒミズも生息するが、これは切歯では区別できるが、骨格での違いを見分けるのは難しい。

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