2012年11月6日火曜日

え?トガリネズミ? What? Shrew? A marten ate a shrew!

11月1日の丹沢尾根歩きで3個のテン糞を拾った。
それぞれ、食べていた果実は、サルナシ、ヒサカキ、キブシであった。
これは、テン糞③中に多数の短い毛で、キブシの種子と一緒に混じって骨片だ。
下の写真の右上に下顎骨の歯がある。真ん中に上顎骨の第一切歯がある。
あれー!この下顎の歯や上顎の歯は見たことがある。
トガリネズミ科の動物たちのものだ。
モグラ科の歯でないことは上・下の第一切歯で、明らかだ。
トガリネズミ科の歯だ。
え?でもトガリネズミ科の動物たちはイタチやキツネが食べようと捕まえても、
動物が発する臭いですぐ吐き出してしまうのではないの?
うん。それはモグラ科のヒミズやヒメヒミズか!
 
しかし、釧路湿原ではトガリネズミそのものが、関東の山でのヒミズと同じように転がっている。
やはり、トガリネズミ科の動物もイヤな臭いを出すのではないのかな?
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Bang&Dahlstrom著”Animal tracks and Signs" 2007 Oxford Univ.Press
の159-160ページには次のように書かれている。
 
トガリネズミ科の動物の身体の側腺からでる麝香のような分泌物を、
フクロウを含む動物たちが嫌うので、
ネズミと間違えて捕まえてしまったものが、道や石や木の切り株の上にあるのだろう。
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でも、確かにテン糞③から出てきた毛を丁寧に洗い流して底に溜まっていたのか
下の下顎の歯などを含む骨片なのだ。
このテンは、トガリネズミ科の動物を食べて、噛み砕いて飲み込んだのだ。
丹沢に生息しているであろうトガリネズミ科の動物は、
トガリネズミ属のトガリネズミ、ジネズミ属のジネズミ、カワネズミ属のカワネズミの
3種類がいる。
しかし、トガリネズミは歯の先が黒褐色に染まるし、
下顎の第一切歯の形状が異なる。
これは、ジネズミかカワネズミのどちらかである。
ジネズミは平野に河畔は農耕地に生息する。
このテン糞③は標高850メートルのところで採集したものだ。
だからもう、カワネズミをしかいない。
ジネズミは山岳には生息しないのだ。
形状からして右の下顎で、舌側から見たものだ。
以下は安部永著「日本産哺乳類頭骨図説」北大出版を参照した。
下顎の第一切歯の形状からしてもカワネズミそのもだ。ジネズミにも似ている。
こころみに手持ち標本の友人が網走で拾って送ってくれたトガリネズミとの下顎と
比べた。んんん?はるかに小さいのだ。 
残念なことに、上の安部永著の本にはスケールが全く示されていない。
では、ジネズミ?カワネズミは大きなトガリネズミ科の動物だ。
では、ジネズミなのか?
外側から見た下顎 
この下顎の歯で不思議な事がある。それは、カワネズミでもジネズミでも良いが、3本の臼歯の前の前臼歯(+犬歯:ジネズミの場合)の2本が新しく出始めた歯のように見える。
否、確実に切歯の後の2本の歯は今出かかっている歯だ。色でも判る。
 
サルやヒトの3本の臼歯(大)は当然、前臼歯や犬歯の生え変わりと共に、
あるいは遅れて生えてくる歯だ。
ぼくらが第三臼歯(大)の親不知でそのことは知っている。
 
トガリネズミ科の歯の萌出順序は、サルやヒトとはまったく異なるとなると、
この写真は説明してくれている。
前臼歯(ジネズミだとすると前臼歯と犬歯)は臼歯が萌出した後で、出てきているのだ。
こんな歯の生え変わり方があるのか?
 
もちろん、歯学や哺乳類の形態を専門に調べている人たちにとっては、
自明の事かも知れない。
しかし、ぼくにとっては驚きだ。
 
トガリネズミやジネズミの死体は、ほとんど乾燥標本にしている。
しっかり、骨にして見なければダメだ!

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