丹沢山麓を歩いていると、スコップ状のもので耕したようなイノシシの掘り起しの跡がある。イノシシは鼻面を地面に擦るようにして歩き回っている。これはアナグマもそうだ。
しかし、アナグマの掘り起しの跡とイノシシのそれとの決定的な違いは。
一見、両者とも地面に鼻面を付けて、同じように地面を掻いて獲物を探しているが、アナグマは大きくて頑丈な前足の爪で地面を掻いているのであり、イノシシは下顎の切歯を用いて、地面を掘り起こしているのだ。
先ずは、イノシシの切歯をみていただこう。
これは♀のものである。左:上顎 右:下顎
上顎の切歯は第一、第二が大きくて、まるで土台石のような感じである。
一方、下顎の切歯は3対がまとまって水平方向に2センチ以上も突き出しており、まるで剣先スコップだ。
この下顎の切歯は♂、♀でも同じだ。
左:♂ 右:♀
左の♂の切歯はかなりすり減って短くなっている。
♂の切歯は他の歯よりもかなりすり減っているので、切歯がかなり酷使される歯であることがわかる。
さて、上下の噛み合わせを見ていただきたい。
♂
♀
上の♀の噛み合わせを真横からみると、
上の切歯(第三を除いて)は、下の切歯の抑えとして、まるで「まな板」のような役目を持っていることが分かる。つまり、下の切歯と「まな板」の上の切歯があるからこそ、ササの地下茎や、クズの根も押し切ることができるのだろう。
さらに、この剣先スコップで地面を掘り起こしているのだ。地面の掘り起しの役目で使われることが大半なのだろう。
犬歯は無根であるが、頻繁に使われると思われる切歯を含む他の歯は有根だ。
ネズミやリスとその使い方は違うが、イノシシの切歯が有根であったならもっともっと山麓の地面を深く掘り起こしているだろう。
すごいなー!
返信削除上あごの第一切歯と第二切歯の形がまるで違い、それぞれの役目がありますね。
挟んだり切ったりと。
人間がシャベルを使って掘っても一筋縄ではいかないあの硬い笹を、15、16本も抜くんだから、すごい能力ですね。
でも第三切歯はあまり役に立ってない?