2008年6月5日木曜日

カモシカの頭骨

先日、丹沢は雷平から採集してきたカモシカの頭骨である。両方の角ともすっと伸びて長くて立派である。このカモシカが若いと判断したのは誤っていた。他の三つの頭骨を比較すると、カモシカはかなり老齢になっても前顎骨や鼻骨、上顎骨の縫合が不完全である。それはシカも同様である。

カモシカもシカも上顎の前歯が無い、カモシカではさらに犬歯も無いので、カモシカの口吻がシカよりも短くなっている。その分、足元が見やすいだろう。
  丹沢には同じ場所にカモシカとシカが生息している。カモシカは単独だが、シカはメスグループを作っている。カモシカは警戒音を出さないが、シカは対岸の斜面からでも警戒音をだす。両種ともアカンボウはしばらくヤブの中にじっとうずくまっており、そこに母親がきてミルクを飲ませる。両種とも草や木の葉、枝、樹皮を食べる。

 カモシカとシカのフィールドサインで区別がつけがたいものに糞粒や足跡の形や大きさ、食痕がある。草や小枝を食べた食痕(引きちぎった痕)は、区別は無理と思われる。しかし、木の幹の樹皮を剥がした痕に、歯形が残っていたなら区別できそうだ。

 下の左が今回採集してきたカモシカの下顎の歯、右がシカの下顎の歯である。ご覧のように両種とも前歯が一見4対あるかのように並んでいる。しかし、端の一本は犬歯なのである。
 さて、シカでは第一切歯が幅広くシャモジ状になっており、この歯一つで、前歯の大半を占め、第二、三切歯や犬歯は単に第一切歯に添えられたようなものになっている。が、カモシカでは各3本の切歯や犬歯も同じ大きさをしている。
 樹皮剥がしの痕に歯形が残っているなら、この形態状の違いがでていることは間違いがない。

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