ヌートリアの切歯を見た時はその表面の黒さに驚いた。前臼歯、臼歯も黒く染まっている(図1&2)。この黒く染まっているのが切歯の前面だけであり、側面や裏面は真っ白のままだ(図2)。このヌートリアは岡山県高梁市の農家で撲殺された個体を教え子のMTさんが2007年に死体を送ってくれたものだ。
図1.ヌートリアの頭骨 正面から2007・06・21
図2.ヌートリアの頭骨 右側面から
この黒色が2024年5月の今では、上顎の切歯の黒色が全体的に消え、下顎の切歯は赤褐色になった(図3)。このヌートリアを含めて全ての頭骨は直射日光が当たらない廊下に置いており、この黒色から赤褐色の変化は死後17年経っている経年変化で、切歯のエナメル質とタンニンとが化学変化を起こして生じたものであろう。図3.ヌートリアの頭骨 正面から2024・05・17
同じ様な歯の色の変化がネズミ類やリスでも見られた。図4は植物写真家のISさんから送付されてきたリスの死体の骨を取り出した時(図4)、上下の切歯の色が黒褐色である。それが、ほぼ10年経った時の切歯の色は赤褐色である(図5)。このように植物食の動物の歯はタンニンによって黒褐色に染まる。が、経年変化とともに色が褪せて褐色になる。図4.ニホンリスの頭骨 2014・09・18
図5.同上リス頭骨 2024・05・17
ヌートリアとリスの歯のタンニンによる染色状態が微妙に異なる。これは食べている植物の違いによるものだということが判る。そこで、さらに、アカネズミで見た(図6&7)。内臓を取り出して剥皮して、腐らして骨を取り出した直後は灰黒褐色であった(図6)。しかし、15年以上経過した今では、上顎切歯が褐色、下顎切歯が薄くなった灰黒褐色に変わった(図7)。
図6.アカネズミの歯の色 2007・04・26
図7.同上アカネズミの歯の色 2024・05・19
興味深いのは、経年変化にともなって、リスでは上下とも黒褐色から赤褐色に変わったが、ヌートリアやアカネズミでは黒褐色から赤褐色に変わったのは、ヌートリアでは下顎であり、アカネズミでは上顎であり、他は薄い消えるような薄い黒色に変わっている。
このような上下の切歯の黒褐色から赤褐色や薄い灰黒褐色への経年変化が、上・下の切歯での違いが何に依るものなのか研究機関に所属する人たちに調べてもらって教えてもらいたい。
そして、齧歯目ではこのような歯の色の経年変化が見られたが、リーフイーターのアカコロブスでは、拾ってきてから四半世紀以上たつのに黒褐色のままだ(5/18にアップ)。齧歯目とアカコロブスの歯のエナメル質と食べる植物食のタンニンとの違いがどのような作用で、歯の色を変えたり変えなかったり、あるいは薄くしたりするのか教えてもらいたい。
このような歯のエナメル質の黒色、赤褐色などへの染色は、タンニンを含む植物を食べるからである。っと考えられるが、、、、、、、、。
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