齧歯目ネズミ科ではネズミ亜科のアカネズミやクマネズミは雑食性で、ハタネズミ亜科のハタネズミやスミスネズミは植物食性で頬歯の形状が明らかに違っている。同じように、一つの科で食性が異なる動物は、霊長目曲鼻亜目狭鼻小目のオナガザル科のオナガザル亜科のニホンザルやヒヒは雑食性だが、コロブス亜科のハヌマンラングールやアカコロブスは植物食性である。それぞれの頬歯(前臼歯と臼歯)を見よう。
左:カニクイMacaca fascicularis 右:ニホンザルM.fuscata
キイロヒヒPapio cynocephalus
サバンナモンキーChlorocebus aethiops
コロブス亜科のサルたちはLeaf eaterと云われるくらい植物食のサルたちだ。
アカコロブス Piliocolobus badius
ハヌマンラングールSemnopithecus entellus
オナガザル亜科のニホンザルやヒヒ、サバンナモンキーとコロブス亜科のアカコロブスとハヌマンラングールの歯を見比べて、両者とも臼歯には前後左右に一つづつ咬頭が計4個ある。そして下顎の第三臼歯の奥に5つ目の咬頭がある。でも、これはサバンナモンキーではない。ネズミ亜科の雑食性のアカネズミと植物食性ハタネズミ亜科のハタネズミのように臼歯(頬歯)に明らかな形状の違いが、雑食性のオナガザル亜科と植物食性のコロブス亜科のサルでもあると思っていた。これはどうしたことなのだろう。オナガザル亜科とコロブス亜科が分かれた分岐年代は1500万年前頃のようだ。この位の年月では歯にまで形態的差異が出てこないのかな?ネズミ亜科とハタネズミ亜科の分岐年代はまだ明らかにされていない。
サルたちは性成熟まで5年はかかり、妊娠期間は6ヶ月で、年1回しか発情しない。しかし、ネズミの性成熟は5ヶ月で妊娠期間は30日もなく、年何回も発情し交尾する。つまり、ネズミたちはサルとは比べ物にならない程世代交代が早い。世代交代が早ければそれだけ形質も変わるということである。
しかし、外部形態の身体の大きさや形状は変わり易いが、臼歯まで変わるのは相当な年月の偶然の変化の積み重ねが必要なのだ。
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