2023年10月24日火曜日

クマに10メートル以内で遭った時の状況と注意    Situation when I encoutered a bear within 10 meters and Precautions

クマが市街地まで出て問題になっている。殺された人たちまでいる。クマに出会った時の対処の方法をぼくの経験を基づいて話したい。

先ず、全くこちらが意識しないで偶然にクマに遭った場合:木曽山地での出会い。実例1:木曽谷に面する斜面の昔の杣道の名残りだと思われる踏み分け道を友人Wと二人で歩いてサル調査をしてた時、上の方からガサっと動物が地面に落ちた小枝や枯れ葉を踏みしめる音がしたので、「サルか?」っと思って二人で斜面を見上げるクマが谷底に向かって鼻を突き出し匂いを嗅いでる。クマとの距離は直線で15メートルもない。ぼくらは息を凝らしてじっとクマを見上げている。当時のぼくらのサル調査では、首からカメラや双眼鏡を胸に下げ、腰にはナタを下げ、背にはザックを背負っていた。もし、クマが我々に近づいてきたらならナタで伐りつけようと構えていた。クマはぼくらの方にサッサッサッサと降りてきた。4,5メートル上の岩の上でとまり、ぼくらの方に鼻先を突き出して匂いを嗅いでいる。ぼくらは息を止めた状態でクマの動きを見ている。クマはぼくらの3,4メートル横を通り過ぎてクマは谷に下っていった。

この時クマに襲われなかったのは、ぼくらは息を止めたように動かずにクマを見つめるだけだったので、クマはぼくらの存在が判らなかった。(ぼくらはクマが見えるのにクマはぼくらが見えていない)

クマに遭った翌日、実例2:小雨が降り、ガスっていたので、サル調査は止めシイタケ狩りをすることにした。ぼくはシイタケがあったところに行った。小雨の中を「ンフン、ングゥ!」という後輩のMの咳払いが聞こえた。メガネは曇っているのとガスで良く見えない。Mはへビースモーカーで絶え間なく「ンフン、ングァー」と喉に絡まる痰が絡まるような咳払いをしていた。小雨ふる笹薮の7,8メートルの奥にMが屈みこんで咳払いをしながらシイタケを摘んでいると思った。ぼくは「オーイMか?Mか?」と声を出しながら歩いていった。目の前の黒い屈みこんでいるのはMではなくてクマだと判った(当時の雨合羽は半分ゴム製のようなものでゴワゴワしていた)。クマは相変わらず咳払いを続けている。ぼくは「オーイMか?Mか?」と云いながら後ずさった。っと間も無く遠方から「福田ぁー、サルだぞぉー」とKMが叫ぶ声が聞こえた。ぼくは声の方に急いだ。

この時クマに襲われなかったのはぼくが同じ調子で後ずさったことが良かった。(実例3の時に判った事だが、咳払いのようなクマの声は、クマの威嚇音であり、クマもぼくの接近を恐れ警戒したのだ。)

実例3:東丹沢のハタチガ沢を歩いている時だった。左にはハタチガ沢林道が走っている。右斜面の奥で「エヘン、ングワ」という咳払いが聞こえた。ぼくは、「上に道か何かがあり、山仕事の人たちがタバコを吸いながら休憩している」と思った。それで、咳払いがした方へ向かって登り始めた。と間も無く、真っ黒の固まりがぼくを目掛けて突進してきた。すぐ、「クマだ!」と思った。そこで、ぼくはいつも学生に注意している「クマに出遭った時の行動」を行った。「動くな、逃げるな、声出すな!」 ぼくは斜面の途中で立ち止まり、恐らく一瞬、意識を失っていたのだろう。気が付いたら、クマは見当たらなく、見上げたら木の上に2匹の子熊がいたので写真を撮った(図1)。

図1.木の幹からぼくを見る子熊2匹

子熊のいる木の奥で「グァー、エヘン」と云うような咳払いが聞こえてきた。沢から風が上がってきているのでクマはぼくの匂いを嗅いでいるのだ。小尾根を一つ巻いて遠回りしてコグマがいる木が見下ろせる場に来たが、クマの咳払いは聞こえなかった。

この時クマに襲われたが、ぼくが一瞬失神して、動かずにいたためクマはぼくの位置が判らなくなったのだろう。この時のクマの咳払いのような音声がクマの威嚇だと判った。クマもぼくも恐れていることを示している。そのため、一旦ぼくを攻撃したが、引き下がったのが正しいのかもしれない。

クマに遭うことを期待して歩いたのはこの1例だけだ:実例4:専門学校の学生たちは「ぼくらもクマに遭いたい」と云い始めた。それには①歩きながらお喋りしない。②靴音を立てないで歩く。を守らせた。谷太郎林道から不動沢と鳥屋待沢との間の尾根道を登って行った。416ピークから鞍部に下り、再び登り始めた時、5,6メートル先にクマの真っ黒い姿を見つけた。ぼくは写真に撮り(図2)、振り返って屈みこんで学生たちに「クマだ!」と小声で伝えた。学生たちは「先生、どこクマ?どこ?」と声を張り上げた。ぼくのすぐ後ろにいた学生Tがクマの写真を撮った(図3)。

図2.ぼくが撮ったクマ
図3.学生Takeshita君が撮ったクマ
が、クマは学生たちの声でとっとっとと上へ逃げてしまった。あのクマはあそこで何をしていたんだろうと近づくと今度は2頭の子熊がとっとっとと上へ走って行った。

ぼくらが襲われなかったのはクマが気が付いた時は学生たちの声で驚いて逃げたからだ。

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クマは目が悪いのでぼくらがクマが見えていても、クマはぼくらが動かなければ、あるいは音を出さなければクマはぼくらの位置が判らない。風がクマの方から流れていて、ぼくらの匂いや音が判らなければぼくらがクマと10メートルくらいで向かい合ってもクマはぼくらの存在が判らない。

だから、①クマに出遭って咳払いのような音声が聞こえたなら、静かにその場から離れることだ。前述したようにクマも怖がって咳払いのような警戒音を出しているからだ。また、②クマが知らずに近づいて鼻先を伸ばして匂いを嗅ぐ行動をしている時は、息を殺して動かない事だ。さらにクマは見えないので、静かに遠ざかる事だ。③もっとも悪いのはクマに出遭って声を出しながら走って逃げることだ。クマは静止している物は見えないが動くと動体視力でもって見えるからだ。

クマ避けの鈴やラジオは人の存在をクマに知らせるので、人を怖がらないクマにとっては鈴やラジオの音は逆効果を及ぼしかねない。

2 件のコメント:

  1. やまぼうし2023年10月25日 9:34

    fukudaさま

    クマへの対処の仕方ありがとうございます!

    東北では多いみたいですが、神奈川では
    聞きませんね。丹沢でも。
    清川村でも半年くらい前1頭処分されてから
    全く遭遇情報がありません。
    気づかないだけか?いないのか?

    出会ってしまったら、静かに離れようと
    思います。
    咳払いのような声ですよね。
    気を付けます!

    タケさんの事、驚いてます。
    体に気つけ生活しましょうね。

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  2. やまぼうしさんへ
    コメントありがとう!
    そう、痰が絡んだようなオヤジさんたちの大きな咳払いです。
    ハタチガ沢を歩いている時、クマに遭った時、木曽で雨降りに日にクマに遭った時の音声を思い出しました。
    クマも人が怖いから警戒音or威嚇音を上げて人に知らせているのですね。
    丹沢を歩いていてこれまで咳払いのような音声を聞いているのではありませんか?
    気をつけましょう!

    タケさんの事、ブログにアップして弔いました。

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