丹沢に生息する偶蹄類はシカ、カモシカとイノシシの3種類がいる。これら3種類を頭骨では容易に同定できる。が、他の骨では難しくなる。ここでは性成熟を過ぎて寛骨の恥骨結合・坐骨結合がしっかりしている個体とし、寛骨からの3種類の違いを明らかにしたい。
まず、これら3種類の寛骨の腸骨の端から坐骨の端までの長さは15センチ以上あり、丹沢に生息する他の哺乳類で15センチ以上大きいのはツキノワグマだけであろう。但し、ツキノワグマの寛骨の標本は持っていないので推測である。
図1は上(背側)からみた寛骨である。カモシカもイノシシも腸骨の端(寛結節と仙結節、イノシシの左の腸骨)が他の動物たちによって齧り取られている。寛骨臼(大腿骨が接する部分)からの腸骨の長さを見ると、シカ、カモシカ、イノシシの順になる(図2)。明らかに、一目で解ることはイノシシの腸骨がカモシカ、シカを比べると明らかに短いことだ。イノシシの腸骨の長さは寛骨臼の直径の4倍若だが、シカは5.5倍あり、カモシカも5倍強ありそうだ。寛骨臼の直径はカモシカ:25mm、シカ:27mm、イノシシ:30mm
図1.背側からの寛骨
左:カモシカCapricornis crispus 中:シカCervus nippon 右:イノシシSus scrofa
図2.腹側からの寛骨(腸骨の長さ)
左:カモシカ135+mm 中:シカ155mm 右:イノシシ111mm
さらに、3種の坐骨を真後ろ(尻)から見る(図3)。図3.後ろからの坐骨の広がり
左:カモシカ 中:シカ 右:イノシシ
図3では、はっきりしないから、個別に後ろから坐骨結合からの坐骨の広がりを見る(図4)。
図4.坐骨結合からの坐骨の広がり
上:カモシカ 中:シカ 下:イノシシ
明らかに、カモシカは90度よりも少し広くなり、シカはゆるやかな放物線を描き、イノシシは90度よりも狭くなっている。左右の寛骨が恥骨結合・坐骨結合で癒合合体している場合はそう多くはない。多くは、野山で骨を拾う時には左右の寛骨がバラバラになっているかネズミやテンやタヌキたちに齧り取られている場合が多い。あるいは、綺麗な?死体を見つけてもまだ若い個体だと左右の寛骨は離れている。
そういう意味では片方の寛骨だけでカモシカ、シカ、イノシシを見極めるところを見つけ出したい。それには標本数が少ないかな?
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