2021年7月1日木曜日

哺乳類の後眼窩突起は家畜では前頭骨頬骨突起  The postorbital process of mammal is the frontal jugal process of cattle

動物(哺乳類)の頭骨の各部分の名称はヒトの解剖学用語からきて、それが家畜解剖用語で用いられて、さらに欧米で哺乳類学が進むにつれて、哺乳類の頭骨の名称が新たにされたものがあると考えられる。その結果、欧米の新しい動物学を翻訳するさいに採用された頭骨の名称に変わってきている。

先ず、前顎骨や後眼窩突起が上げられる。ヒトの解剖学では前者は切歯骨、後者は前頭骨と頬骨が癒合合着する部分で特別な名称は付けられていない(図1のの部分)。しかし、家畜比較解剖図説(加藤嘉太郎著 養賢堂)では、後眼窩突起は前頭骨頬骨突起と名付けられている。 

図1.上野の国立科学博物館のヒトHomo sapienceの頭蓋骨
:前頭骨頬骨突起 :切歯骨 :眼窩下孔 ↑:オトガイ孔

切歯骨(前顎骨)はヒトを含む真猿下目のサルではアカンボウの時から左右の骨が癒合・合体しているが、他の霊長類や哺乳類ではゾウやハイラックス、イノシシなどの一部の動物を除いて下顎骨はオトナになっても左右はは合体しない。切歯骨(前顎骨)から出る歯が切歯だ!
図2.ホッキョクギツネVulpes lagopusの頭骨
:後眼窩突起 :前顎骨 :眼窩下孔 ↑:オトガイ孔
図3.ヒト♀の頭蓋骨左側面図(哺乳類頭蓋の画像データベース:獨協医科大学から)
:前頭骨頬骨突起 :切歯骨 赤丸部分:頤(オトガイ)
図4.カニクイザル♀Macaca facicularisの頭蓋骨
下顎骨の前にはヒトにある頤(赤い部分)がない。:後眼窩突起

サルになると後眼窩突起という語もちょっと合わないね(図4)。それは霊長類の眼窩は正面を向いているので眼窩の後ではなく横だからだ。しかし、他の哺乳類の眼窩は側面にあるから、眼窩の後に後眼窩突起がある(図2,図5)。
図5.イノシシ♂の頭蓋骨
:後眼窩突起 :前顎骨 :眼窩下孔 ↑:オトガイ孔
下顎骨にはオトガイが無い

そして、哺乳類の頭骨の実情に合わない眼窩下孔とオトガイ孔という名称もある。図2のホッキョクギツネや図5のイノシシの頭骨で判るように、眼窩下孔は眼窩の前方にあるので、眼窩前孔と命名した方が適切である。ヒトだけが下顎骨の前端部が突き出て頤(オトガイ)がある(図3)が、サルを含むヒト以外の哺乳類ではオトガイがない(図2、図4、図5)。オトガイがないのに、下顎骨の前部にある孔をオトガイ孔と名付けられている。英名は動物ではmental foramen、ヒトではforamen mentale。この違いが判らない。獣医学を修めた方なら判るかな?

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