5月9日の丹沢実習の続きです。
⑥のテン糞にはキブシの種子やミズキの蕾がでてきたが、
さらに齧歯目以外の小哺乳類の骨片・歯がでてきた。
これがその骨片と歯である。
右下の赤線で囲んだCは爪である。
歯とともにあるのは上二つの大きいAは上顎骨で下のBは下顎骨である。
当初、この顎骨と歯に目が移り、トガリネズミ目か小翼手亜目かどちらかだと考えた。
が、爪の形状で小翼手亜目ではないと結論づけた。
手持ちの乾燥標本のアブラコウモリとユビナガコウモリの足の爪はカギ状になっているからだ。
標本を見るまでもなかったかもしれない。
コウモリたちは足の爪で岩穴の天井などにぶら下がるんだ。
では、トガリネズミ目にはモグラ科とトガリネズミ科が生息しているが、
これも手持ちの乾燥標本(ヒミズとジネズミとトガリネズミ)を見た。
ジネズミとトガリネズミの足の爪はカギ爪状だ。右下の爪の形状ではない。
もう、これはモグラ科のモグラ亜科か、ヒミズ亜科の動物だ。
歯をみても、AとBに挟まれる臼歯やBの臼歯から小翼手亜目の歯ではないことが解る。
モグラ科とトガリネズミ科の歯の最大の違いは上顎の第一切歯が形状がトガリネズミ科ではカギ状になっているが、モグラ科ではまっすぐ伸びている。
Aの右は左の前額骨と上顎骨で、まっすぐな歯が解る。
これからヒミズ亜科の動物であることが解る。
Aの右側の左顎骨部分を下から(口内から)拡大した。
第一切歯がヘラ状でなく尖っているのでヒミズと同定される。
上の写真の左前額骨と上顎骨の部分は手持ちのヒミズ2個の頭骨と比べた。
顎骨も第一切歯も一回り小さいのだ!う~ん、ではこれは誰だ?
幼体のヒミズと結論したがどうだろう?
ヒミズとしたならば、これで糞から出てきたのは、2度目?3度目?だ 。
ヒミズだったのですね。食虫目は臭い?のためか、死骸が食べられずに残っていることが多いという話を観察会で聞いたことがあります。ヒミズは一度だけ死骸を見たことがあります。モグラに比べると尾が長いのですね。
返信削除歯にはあまり関心がなかった(というか、全然わからない^^;)のですが、おもしろいですね! 「何(脊椎動物)を食べているか」を知るには歯のデータを蓄積することが大切なんでしょうね。
bluetittitさんへ
返信削除そうなんです。何故か本州では死んだヒミズが転がっていることがあります。これが釧路湿原ではトガリネズミが転がっています。
カラスにも他の動物にも食べられないで残っているんですね。
でも、こうやってヒミズの歯が糞から出てくるので、食べられてしまう個体もいるということですね。食べれてしまう個体と食べられずに放置される個体の何が違うのかこれからの課題ですね。
動物の歯は化石としても残りやすいので、非常に重要な同定の材料となりますね。
でも、ヒミズやトガリネズミ、あるいはネズミの歯はあまりにも小さいので拡大して見なくてはいけないので大変!